第三章
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第三章
「それで。来たけれど」
由佳里は席に座るとマスターに問うた。顔は彼に向けている。
「今日は。詳しい相談かしら」
「私ではないのです。これが」
マスターは穏やかな笑みのまま彼にまた述べる。
「マスターじゃなくて?」
「そうです、私ではなく」
にこりと笑っての言葉であった。
「別の方ですが。宜しいでしょうか」
「ええ、いいけれど」
職業柄こういうことには慣れている。だから何も迷うことなくその申し出を受け入れた。思えばこれが決まりとなったのであった。
「誰かしら」
「こちらの方です」
言うと店の奥からすっと誰かが出て来た。その人は。
「えっ」
「宜しいでしょうか」
マスターはその人を手で指し示しながらまた由佳里に問うた。
「こちらの方を占われて」
「え、ええ」
由佳里は戸惑う声で答えた。
「御願いします。それでは」
「はい」
彼はすっと由佳里の前に座った。そうして彼女をじっと見て話すのであった。
「それでですね」
由佳里が最初に口を開いた。
「宜しいでしょうか」
「私が占って欲しいことを言うのですね」
彼はそう彼女に言う。
「確か。そういう流れだったかと」
「そうです」
また彼に答える。
「まずは御名前を」
「山崎篤弘」
彼はそう名乗った。
「銀行で働いています」
「銀行員なのですね?」
話を聞きながらカードを出す。彼女はカード占いなのだ。トランプやタロットを使う。今出してきたのはトランプであった。
「そうです。働いている場所は」
「いえ、そこまではいいです」
顔を赤らめさせて答えた。彼、山崎篤弘の顔をとてもではないが見られない。
「そこまでは」
「そうですか。それでですね」
「はい」
話を続ける。何故か二人共顔を赤らめさせ俯いている。
「占って欲しいことは」
「それは」
「好きな人がいまして」
「えっ!?」
その言葉を聞いた由佳里の顔が硬直する。
「好きな人、ですか」
「そうです。その人は」
心臓が止まりそうになる。これからの言葉を聞くのが怖かった。だが篤弘はどういうわけか話すその間にもじっと由佳里の顔を見詰めている。まるで思い詰めたかのように。
「御名前はですね」
「ええ、御名前は」
「秋山さんっていいます」
「秋山さん!?」
自分の名前だ。それを聞いてまずは苗字が同じだけだと思った。
「秋山さんですか」
「はい。それで下の名前はですね」
「はい。何ていうんですか?」
「由佳里さんっていいます」
「それって・・・・・・」
その名前を聞いた由佳里の顔が止まった。まるで鏡が割れるかの様に。今にも壊れんばかりの顔になってしまった。
「はい、その方がどうしても気になりまして」
「そうなので
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