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他人は占えても
第一章
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いる人よ」
 由佳里はそう答えた。
「カウンターにね。今日はいないけれど」
「カウンターにですか」
「ほら、いるじゃない」
 ちらりと右の方を見て述べる。
「サラリーマンっていうか銀行員風の。あの人よ」
「ああ、あの方ですか」
 マスターはそこまで聞いて納得したように大きく頷いた。それから述べた。
「あの方がお好きなのですか」
「ええ。名前は」
「袴田様ですね」
「名前知ってるの」
「勿論です」
 にこやかに笑って答えてきた。その物腰は洒落てダンディであると共に穏やかであった。その動きが実にバーに合っていた。
「あの方もこの店の常連ですしね」
「そうね。だから気になってきているのよ」
 由佳里はまた寂しげな笑みを浮かべて述べた。
「顔も声も」
「いい感じですよね」
 マスターはそう述べた。その袴田という客はすらりとした長身で細面の眼鏡が似合う知的な顔に黒い髪をオールバックにしている。端整な男だった。
「あの方は。実際に」
「いい人なの?」
「人としてもよくできた方ですよ」
 マスターは笑って言葉を続ける。
「真面目で。しかも穏やかで」
「人に嫌われる性格じゃないってことね」
 占い師の顔になっていた。その顔で話を聞いていた。

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