第五章
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「そうだ。私でなければあの男の相手はできまい」
彼もまたこう返すのだった。
「だからこそ。今は」
「わかりました。それでは」
「うむ」
話が決まろうとしていた。カサンドラの絶望はそのまま奈落にまで落ちようとしていた。しかしだった。ここで将校の一人が出て来たのであった。
「お待ち下さい」
「むっ!?」
「そなたは」
「イオラトステス」
ヘクトールが彼の名を呼んだ。その茸を思わせる髪型の若い将校であった。
「どうしたのだ?一体」
「ここはカサンドラの言われることに理があるかと存じます」
彼は畏まって一礼したうえでこう述べるのであった。
「カサンドラのか」
「はい。アキレウスは確かに剛勇無双の者」
「その通りだ」
ヘクトールは彼の言葉に返す。これはもう言うまでもなかった。
「ですが弓となるとパリス様に分があります」
「私にか」
「トロイアにはアポロン神とアルテミス神がそれぞれついておられますね」
「その通りだが」
「それもあります」
彼はその二柱の神の名も挙げてきた。
「弓の神である御二人が」
「では二柱の神々の御加護もあるからこそ」
「ここはアキレウスに弓の勝負を挑むべきと思います」
あらためて二人に告げた。
「それで如何でしょうか」
「そうだな。言われてみれば」
パリスは考える顔になった。そうしてそのうえで再び口を開いた。
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