彼女が手繰る糸
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の身体と心を暖められるように、友としてはぎゅっと抱きしめて。
苦笑を一つ。雛里はゆっくりと冷たい声を紡いでいく。
「ありがとう、ございます。では失われたモノを使いましょう。私達がするべき事は――――」
つらつらと話された説明に、桂花は悲鳴を上げそうになった。どうにか抑え込んでも、震える身体は止まらなかった。
恐ろしい……本当に恐ろしい方法だった。
それはたった一つで多くを捻じ曲げられる、綺麗で、残酷な……誰かにとっては痛ましい策だった。
説明を終えた雛里は、ぎゅっと桂花を抱きしめて目を瞑った。
策の有用性に気付いているから桂花は追加で何も聞かず、その身体を抱きしめて、畏れから逃げるように瞼を降ろした。
緩く笑みを浮かべて雛里は思考に潜る。涙を一筋、零しながら。
――華琳様なら、きっとあの人に『他者を救いたいと心から望んだ時にだけ戦場に立たせる』と命じてるはず。
覇王は自らの願い無く人を殺すモノを認めない。そんな事は雛里も分かり切っていた。
黒麒麟の願いが後から沸き立った心の底からの願いであると教えても、そうせざるを得ないのだと。
――過去との相違は十分。人を殺しても戻らなかったら……私の考えた策で、“覇王の為に戦う黒き大徳”が完成される。
戻る事も視野に入れて、それでも尚、彼が戻らない事を願っている。ただ、彼に幸せになって欲しいが故に。
――皆、気付かない。私と一緒であの人はあの時から、二つの自分を切り替えていた。だから今度は、黒麒麟とは似て非なるモノを――――覇王に近しい黒き大徳と、治世に平穏を生み出せる優しいあの人を……私が確立させる。
秋斗の事を誰より知っているから、黒麒麟になろうとすることなど……初めから計算の内だったのだ。
月が雛里に対して諦めないでと言った時点で秋斗を戻そうとするは明白。求めれば求める程に、先にあったはずの想いを知っていくだろう。
そうして誰かの代わりに役割を演じようと踊る道化師に、雛里がそっと、最後の演目を知らせるのだ。
――黒麒麟の代わりに想いを繋ぐのは私。これから新しく想いを繋いでいくのは彼自身。矛盾の刃は無く、混ざり合った想いのカタチを携えて、覇王と願いを共にする徐公明が生まれる。徐晃隊と想いを同じくしながら、徐晃隊には成り得ない彼が出来上がる。
そこに現れる彼は嘗ての徐晃隊と何が違うのか……。
何も変わらない。想いも、願いも、在り方も、全てが変わらない。ただ一点、新しく生きられる可能性を示される事だけが違う。
だから彼女は、鳳統隊を手放すつもりは無く、彼と共に戦える戦場を彼らに与え、他の道を指し示したのだった。
徐晃隊はどうなりたいか。決まっている、彼になりたいのだ。
されども、前の彼とは違うから追い
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