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夏祭りフェイズ  2
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で愛らしく笑う雛里に見惚れそうになった秋斗は、緩く握る手に力を込めて前を向く。小さな掌の温もりは変わらず、握り返されてじわりと胸が温かくなった。
 雛里の歩幅は狭い。転んでしまわないように、無理をさせないように、彼はペースを合わせて進む。
 どの店の食べ物を食べようかなと考えながら歩いていると、ふいに、雛里が繋いでいる手を離して、ぎゅっと腕に抱きついて来た。

「どうした?」
「しょ、しょの……もっとくっちゅきたかっただけ……でし」

 驚いて聞くと、恥ずかしいのか彼女は耳まで真っ赤に染め上げて、秋斗を見上げて噛み噛みで呟いた。
 うるうると潤んだ瞳に見つめられると秋斗の心臓は鼓動を早めた。まさか雛里がそんな大胆な行動に出るとは思いもよらなかったから。

「……ご迷惑なら……離れましゅ」

 緊張と嬉しさと恥ずかしさで、歩きながらも反応出来ない秋斗を見て、しゅんと俯いた雛里は絡めた腕を放した。
 寂しさが少し湧いた。秋斗にとって迷惑なわけがない。だから彼は……

「……じゃあさ、もうちょっとくっついて歩こうか」
「え……あわっ」

 雛里の肩を優しく引きよせた。今度は雛里が何も反応できなくなった。
 幾分か後、秋斗の腰に腕を回して、ピタリと寄り添って歩いて行く。その姿は、間違いなく恋仲の男女にしか見えない。公然といちゃつく姿を晒すのは恥ずかしい。胸が高鳴り、顔は真っ赤に茹で上がる。まともに顔を見る事も出来ない。

――恥ずかしい。けど、幸せ……

 雛里は頬が緩んだ。胸にこみ上げる幸福感から、それも詮無きかな。ただこうして二人で寄り添って歩いている事が、嬉しくてしかたなかった。
 下駄がカラコロと音を鳴らす。歩幅の違いから重なる事は無い。それすら雛里にとっては幸せを齎すモノであった。
 彼と彼女はそうして……夏祭りの夜を進んで行く。









〜後ろの一コマ〜



 秋斗と雛里が寄り添って歩いている姿を遠目に見ていた二人は、羨望の眼差しを向けていた。

「……少し……アレはやり過ぎでは無いでしょうか?」
「人目も憚らずにイチャイチャイチャイチャと……あんなの普段の街中では絶対に出来ないじゃない」

 しかしながら、華琳は人のことを言えそうに無い。
 華琳と月が繋ぐ手はしっかりと指が絡められ、並ぶ身体は寄り合い、隙間など全くない。話す声は喧騒から聞こえ難い為に、耳元まで口を寄せて囁き合う。
 後ろの二人、桂花と詠からすれば、華琳と月も十分にいちゃついているように見えるのだが……さすがに言えない。

「ねぇ、桂花」
「何よ、詠」
「大通りを半分行ったくらいにさ、手を繋ぐ人を変えようって提案してみるの……いいと思わない?」
「っ! いいわね、それ」

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