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カサンドラ
第一章
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 士官達は顔を見合わせて言い合う。彼等にとってははじめて聞く名前だった。だから知らないのも当然だった。しかし彼は知っているのだった。
「それは誰なんだよ」
「トロイア王家の方だよな」
「そうだ。カサンドラ様の仰っていることは正しい」
 そしてまた葡萄酒を飲むのだった。
「きっと来られるぞ」
 彼は酒場でこう言うのだった。だがこのことはカサンドラの耳には入らず彼女はアポロンの言葉を思い出し悲嘆にくれるだけだった。そしてそれから暫くして。
 見事な金髪に黒い目、アドニスを思わせる中性的な顔立ちをした麗しい青年がトロイアにやって来た。その彼こそは。
「パリスです」
「パリス!?」
「まさかそなたが」
「そうです。父上、母上」
 王と王妃にパリスと呼ばれたその若者は微笑みそのうえで二人の前に片膝をついた。そのうえで静かに述べるのであった。
「只今戻りました」
「生まれてから。何処かに消えたと思っていたが」
「どうしてここに」
「これは偉大なるアーレス神から聞いた御言葉です」
 彼はここでアーレスの名を出した。言わずと知れた戦いの神である。外見は美青年だがその性格は粗暴で殺伐としていることで知られている。

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