喪失‐ロスト‐part1/王子との謁見
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ことに疑問を感じていた。
「…本当は、パーティーは嫌いだから」
その意図が、タバサが本来静かな環境を好むとともに、きっとさっきのウェールズとの会談の内容にあると見たキュルケは納得した。
「そうね、なんだか…もう負けるのが目に見えているのに無理に明るくふるまっているようにも見えるわ。それにワルド子爵とルイズの結婚のことも、気分じゃないわね。皇太子と姫殿下が引き裂かれたって言う事実が明かされた直後にあんな話を持ちかけてくるなんて…何を考えているのかしら?」
自分がもしワルドのような婚約者に、こんな時に結婚式を挙げようと言われたとしても、正直嬉しくないし断らずにはいられない。いくら王党派の士気向上のためもあるとはいえ、結婚式とは本来新郎新婦とその一族郎党のために行う儀式。国の政治的な高揚のために行うなど野暮と考えていた。ルイズも押しに弱いものだと思った。結局キュルケはその日の夜は一滴もワインを飲まなかった。
サイトとギーシュはバルコニーにてグラスを片手に立っていた。ギーシュはバルコニーの柵に身をゆだねながら、ぐったりと沈んでいた。
「姫殿下と皇太子さまが…姫殿下と皇太子さまが…」
「お前まだ引きずってんのか?いい加減にしろよ…ったく」
ここにいる人たちはこいつのくだらない浮気癖以上に、明日死ぬかもしれないと言う瀬戸際に立っているのだ。もう放っておこう。サイトはルイズの姿を目で追って行った。
晩餐の最中、ルイズたちは王党派の貴族たちから料理やワインを何度も進められていた。
「大使、ミス・ヴァリエール!我々にもあなた様の花嫁姿をお見せしてほしい!あなたのお美しい花嫁衣装姿をご覧になって、我々が大切なものを守っていると言う実感が欲しいのだ!」
「この酒はいかがでしょうか!?アルビオン一の酒ですぞ!飲めば頬が落ちるほどの美味を味わえますぞ!」
「す、すみません、ちょっと失礼します。ごめんなさい」
ルイズは、それらのもてなしを丁重に断ると、急ぎ晩餐会の場を後にした。ここにいたいと言う気持ちが全く持ってなかった。ウェールズとアンリエッタの引き裂かれた愛、直後のワルドからの突然の結婚式をつい先ほど持ちかけられたことで、彼女の心は穏かではなかった。落ち着くためにも、彼女はここを離れずにはいられなかった。
「あ、あのルイズが…追いかけないと」
「ああ、君に言われなくとも分かっているよ」
ワルドはルイズを追いに、そしてサイトもまた手伝いのために、未だへこみ続けるギーシュをほっぽりだしてルイズを追っていくことにした。
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