第九章
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いたいことはわかるな」
無言でこくりと頷く。そのうえで彼を見る。
「まず私の名を言おう」
彼はそう尚志に告げてきた。
「矢吹敏樹だ」
彼は名乗った。
「それが私の名だ。そして私が名乗る時は」
じっと尚志を見据える。目からは強い光が放たれ鋭く光っていた。
「多くは勝負の時だ。それも聞いているな」
「勿論です」
身動ぎ一つせずに答える。怖いがそれを必死に押し隠しての言葉だった。
「わかってます。けれど」
「また聞こう」
矢吹はまた尚志に声をかけてきた。
「君は。若菜が好きか」
「最初は何とも思っていませんでした」
まずはこう言ってきた。
「最初は、か」
「只のクラスメイトだと思っていました」
正直に述べる。隠す気もなかった。
「けれど次第に」
「ふむ」
矢吹は彼の言葉を聞いたうえで娘に顔を向けた。そのうえで問うた。
「若菜」
「はい、お父さん」
「御前の言った通りだな」
そう娘に声をかけてきた。
「間違いないな」
「ええ」
彼女は別に怖がってはいなかった。父娘ということで別に怖がることはないのであろう。
「そうよ」
「ふむ、確かにな」
娘の言葉に対して頷くとまた尚志に顔を向けてきた。
「嘘はついてはいない。それはわかった」
「有り難うございます」
「それでだ」
そう言ったうえでまた口を開く。まるで閻魔の尋問のように思えた。
「次第に好きになったのか」
「そうです」
その問いに対しても答える。
「一緒にいるうちに」
「それも聞いた通りだ」
話をしているうちに嘘をついたらどういうことになっていたか、そう思うと冷や汗が出るのを止められない。実際に今彼は恐怖を必死に隠していたがそれは顔だけのことであり身体中から脂汗を滝の様に流していた。
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