第十三章 聖国の世界扉
プロローグ 動き出す者
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んと仕事しなさいッ!!?」
再度女の拳が振り下ろされ、机が先程よりも大きく振動する。横倒しになった蝋燭立てや倒れた本が、机の上から避難するように床に落ちていく。銀のソレも大きく波打ちと、怯えたようにフルフルと震え始め―――微かに光り始めた。
「……あ」
苛立ちと怒りで釣り上がっていた女の目がゆっくりと大きく見開かれていく。
「―――いた」
唇を震わせながら、微かに震える声で女は少し濡れた声で呟く。
視線の先―――淡く銀に輝く鏡のようなソレ。
そこに、女が探し続けていた男の姿が映っていた。
「何よ……やっぱり生きてるじゃない……元気そうで……全く、心配かけ―――あれ?」
目尻に滲んだ涙を指で拭いながら微笑んでいた女だが、不意に訝しげな顔になると目を細めここではない何処かを映し出すソレを注視する。
「ちょっと、待って……まさか……」
バンっ、と音を立てながら机の上に広がる鏡のようなソレを挟み込むように手を着いた女は、ぎりぎりと顔を寄せソレに映る男の横を見る。
そこには―――。
「また、なの……―――ッッこのッ! 人にこれだけ心配かけさせてっ!! その間にあんたはまた女を作ってッ!! しかもこんな小さ―――……え? ちょっと待って。ほんとに小さい……は? ちょ、本当にいくつなのよこの―――……え?」
鏡のようなソレに映った男の隣に、男に縋るように立つ少女を見つけ、怒声のような悲鳴のような声を上げながら頭をかき乱しながら苦悩していた女だったが、唐突にその動きを止めると大きく目を見開く。女は何か信じられないものでも見るかのように、見開いた目でじっと銀色に輝く鏡のようなソレを見つめ続ける。
「………………………………」
見開かれた目が段々と細まり、女の目が閉じられる。先程までと一転して、女は恐ろしいまでに真剣な顔付きで考え込み始めた。頭痛を堪えるように額に置かれた手の下には、深い懊悩を見せるように深い皺が刻まれていた。
「………………………………………………………………?」
思考に没頭していた女だったが、ふと自分を見つめる何者かの視線を感じ取り、額に当てていた手を離し顔を上げる。慎重に部屋の中を見渡す女。
誰?
覗かれている?
窓……ドア……は閉まってる。
防壁は……破られていない。
じゃあ……。
女の思考が高速で動き、視線の正体を暴こうとする。
だが、分からない。
女が再度思考に没頭しようとした瞬間、目の端に机の上に広がるソレを捉える。正確には、ソレに映し出される“何処かの映像”を。
「まさか……通じているの?」
それに気付いた女が、慌てて机に駆け寄る。
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