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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
プロローグ 動き出す者
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の私がそうそう失敗する筈がないのよ―――っ!」

 女の見下ろす先、羊皮紙に描かれた複雑な魔法陣と、その周辺に散らばる砕けた宝石がドロリと溶け出す。魔法陣を描いていたインクの黒と、砕け砂になった宝石の鮮やかな色が、女の眼下で混ざり合う。ゆっくりと複雑な輝きを見せていたソレは、時間が経つにつれ、次第に銀色に統一されていき、最終的には机の上に手鏡程度の大きさの銀色に輝く鏡ようなものが出来上がった。
 水銀で出来たかのようなその鏡のようなものを、女は期待した視線で見つめる。

「さあ……私に見せなさい―――最低でも三百万の仕事はしなさいよね―――っ」

 脅すような声を女は鏡に向けて放つ。その脅しに屈したのか、銀に輝く鏡のようなソレの表面に、水滴が落ちた水面のような波紋が広がる。一つ、二つ、三つ……時間と共にその頻度は多くなり、もはや波の形のアートのようなモノとなる。もしや失敗? と女の顔が奇妙に歪みかけた時、スッ、と音もなくソレの上に広がる波が収まった。
 か細い安堵の息を吐いた女が見つめる中、ソレはゆっくりと銀色に輝き始める。
 輝きは強まる一方で、目も開けられない程の輝きを見せるソレに、女は手で自分の目を覆う。 

「―――ッ!?」

 輝きを増し続けるソレは、部屋を真っ白に染め上げるまでその光を強めると、唐突に輝きを消してしまう。
 しぱしぱと何度も目を開けたり閉じたりしながら、女は眩む目を回復させつつソレを見下ろし―――、

「…………はぁ?」

 ―――呆れたような声を上げた。

「ちょ、ちょっと待って。何でこんなのが映ってるのよ? って言うか何、これ? えっと、もしかして……“こすぷれ”ってやつ? でも……何でドレス? うわっ、派手な服……どこぞの教皇様じゃないんだから……って、何か普通に高そうな……いやまさか……いやいやいやいや、ない―――ないわねそれだけは。じゃあ、ここは……って言うか肝心のアイツは何処よ。アイツが映らないと意味ないじゃない? まさか失敗……ちょ、ちょっと待って、待ちなさい―――三百万―――っ!! 三百万も使ってコレ? うっかりってレベルじゃないわよっ!! ここまで期待させて間違いでしたじゃ許さないわよッ!!?」

 女が怒り(理不尽)にまかせ机を拳で打ち付ける。しかし、女の細腕でいくら打ちつけようともオーク材で出来た頑丈な机はビクとも―――ミシリ、と危険な音が拳の下の机から響き、机の上にある蝋燭立てやら本やらが一瞬宙を浮きバタリと倒れた。奇妙な光景を映し出す銀色に輝くソレも、大きく波打ち波紋が全体的に広がる。

「あっ!? ちょ、待ちなさい! 消えるな! このまま消えたらゲテモノの召喚の触媒に使うわよっ!! いいの!? 変な触手やら蟲やらの召喚の触媒に使われて!? いやだったらちゃ
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