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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
プロローグ 動き出す者
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、その無駄になってしまった被害金額を思い起こし自分で言いながら落ち込んできたのか、がくり、と力なく床に崩れ折れた。机の上に頬を当て、薄く開いた口から魂が抜け出たような顔をしながら、女は力なく自分が今いる場所を見回した。
 狭い部屋であり、工房としても良いものではない。
 自分の本来の工房に比べれば、設備の面で言っても、防衛の面で言っても天と地ほどの差がある。
 魔術を行使するならば、工房の質が上である自分の屋敷でやった方が良いに決まっている。しかし、それが分かっていながら、ここで行ったのは何故か……。
 もしかしたら、あいつがまた、何時ものようにふらっと帰ってくるのを期待しているからでは……。
 ―――妹と同じように。
 ちゃんと寝ているのだろうか……もしかしたら、また、あの土蔵にいるのではないのか。
 この間みたいに、あそこでまた一人……寝てしまっているのでは。
 まだ風邪を引くような時期ではないが、あそこは冷える。寝る前に確認しておく必要があるわね、と、女は膝に力を込めて立ち上がりながら思う。
 あいつがいなくなって。もう三ヶ月(・・・)。今までそれくらい姿を見せなかったことは何度となくあるため、珍しいわけじゃない。
 しかし、どうも嫌な予感がする。
 気持ちを入れ替えるように頭を軽く振った女は、踵を返し机に背を向けると、可愛い妹がちゃんと自分の部屋で寝ているのか確かめてから、気分転換に紅茶でも飲もうかと考えつつ、ドアへと向かって歩き出した。

「そう言えばあの子、最近何か調子が悪そうだったわね。風邪じゃなければいいんだけど……」
 
 時間は深夜と言っていい時間である。日が落ちてからが本番の魔術師だからと言っても人間である。夜になれば眠い。初めて使う術式による緊張から解き放たれた開放感と、疲労感もあって、女は欠伸を噛み殺しながら、ドアノブへと手を伸ばし―――。

「―――ッ!?」

 ―――寸前、勢い良く背後を振り返った。
 
「……」

 部屋の中を見渡す。

「…………」

 先程と何も変わりはしない。

 だが―――違う。
 何かが―――違う。

 ゆっくりと、女の視線が部屋をなぞるように動く。
 壁―――本棚―――ベッド―――天井―――机―――視線がピタリと止まる。
 
「―――うそ……成功してた?」

 信じられないものでも見たかのように目を見開いた女だが、直ぐに気を取り直すと机へに向かって駆け寄っていく。ドタバタと慌ただしげに駆け寄るその姿に、家訓である“常に優雅たれ”と言う姿は何処にも見受けられない。バンっ! と音を立てて机に両手を置いた女は、睨み殺さんばかりの視線で机上にある魔法陣が描かれた羊皮紙と砕けた宝石を見下ろす。

「ふ……ふふ……流石私ね。そう、こ
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