魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇4
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たのか、まだあまり強い痛みは感じない――が、それでも徐々に痛みが強くなり始めている。つまり、修復が始まっていた。ついでに言えば、辺りを汚さないように、血止めだけはしてある。それなら、このまま放っておいても問題あるまい。
「これくらいなら、放っておいても治る」
そもそもが不死の怪物である。この程度の傷は取るに足らない。
「ダメだよ! こんなに酷い傷なんだから、ちゃんと手当てしないと!」
いつになく強い口調で、フェイトが主張する。珍しい光景だが――できれば、腕を掴むのだけはやめて欲しかった。ちょうど神経が修復されたらしく、脳天まで突き抜ける痛みを味わう羽目になった。魔法使いとしてなのか、不死の怪物としてなのか、それとも単純に男としてなのか、自分でもよく分からないが――とにかく何かしらの沽券にかけて悲鳴を上げる事だけは何とか耐えきったが。
「きゃあ!? ほら、こんなに血が出てる!」
滲んだ視界を瞬きして誤魔化していると、そんな声が聞こえた。
血が滲まないよう、包帯に魔力を吸わせておいたが、さすがに解かれてしまえばその限りではない。床に滴る血を見て、フェイトがさらに強い口調で言う。というか、外すならせめて外す前に一言言って欲しかった。
「……あとでソファの染み抜きをしないと。血はなかなか取れないんだが」
血で染まったソファを見やり、思わず呻いた。
「そんな所帯じみた心配してる場合じゃないだろ! まずはそのエグイ傷をどうにかしろってば! っていうか、エグイのは魔法だけにしときな!」
それに文句を言ったのはアルフだった。こちらの傷口を見て、顔を青ざめさせている。
「エグイってお前な……。まぁいい。確かにまずは傷を癒すのが先か」
どのみち、このまま血が滴り続ければ仕事が増えるだけだ。それなら、原因を先に断つのが賢明か。それに、
「だが、お前も俺の事は言えないだろう?」
左手だけで、そっとフェイトの手を掴む。俺ほどには重傷で無いにしても、白いその掌には、火傷のような傷があった。途端に、フェイトがばつの悪そうな顔で視線をそらす。全く、困ったものだ。ついでに言えば、散々吹っ飛ばされたアルフも無傷ではあるまい。
それなら、まぁ全員まとめて癒すとしよう。エグイ魔法ばかりだと思われるのも癪だ。
「――癒しの花園よ」
魔力を練り、囁く。周囲に黄金に輝く花園の幻影が浮かび――舞い散る花弁が癒しの力となって周囲を満たした。その光に包まれて、フェイトの掌の傷が消える。アルフも同様だろう。ついでに、俺の傷の復元速度も随分と早くなった。表面的にはほぼ完治した。実際のところ、まだ少し動きが鈍いが――まぁ、染み抜きと簡単な料理くらいは問題なくできるはずだ。ここまで癒しておけば、どれだけ遅くとも明日の昼過ぎには完全に回復しているに違いない。
「
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