暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇4
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 右手でつかみ取ると即座に――強引に救済を始める。というより、実際は地形を介しての魔力の回復に近いだろう。だが、流れ込んでくる魔力の凶悪さは素直に生贄行為を思わせた。実際、次に限界を迎えたのは右腕だった。禁術を発動させた時のように、派手に裂ける。まぁ、実際はあれほどではないが。取りあえず、まだ一応の原形を留めたまま繋がっている。いつまで持つかは分からないが。
「光!」
 血塗れの腕に、フェイトの手が重なる。自分の魔力に、フェイトの魔力が混ざり合う。だが、何故素手で?――その疑問は、実はなのはを見た時点で分かっていた。デバイスに破損があるらしい。少なくとも、なのはのデバイスには無数のひびが走っていた。先ほどの咆哮が原因だろう。このまま完全に壊れてくれれば――おそらくなのはは魔法を使えなくなるだろう。魔導師として覚醒しても、素人のうちはデバイスなしでは魔法が使えないと聞いた覚えがある。
「……これでいい」
 最後に身もだえするように胎動して――ジュエルシードは鎮まった。血でぬめったそれは、感覚が失われた手から簡単に滑り落ちる。それが地面に落ちるより先に、フェイトが受け止めた。
「光――ッ!」
「心配するな。……帰るぞ」
 フェイトの言葉を遮り、二人に告げた。そのまま、なけなしの魔力を練り上げ、逃げるように空へと舞い上がる。なのはの面倒は……もうしばらくはリブロムに任せよるより他になさそうだ。
『分かっているな。相棒』
 その直前、リブロムが言った。
『その様子なら、オマエが堕ちるまでそう長い事はかからねえぞ』
 そんな事は言われなくても分っている。だが、あえて訊き返した。
『あと、半月もねえよ』
 あとどれくらいだ?――その問いかけに、リブロムは言った。それには答えず。空へと舞い上がる。わざわざ聞かなくても、分かっていた事だ。
 自分が自分でいられる時間が、残り僅かだという事くらいは。




 隠れ家に戻って、すぐのことだ。
(これはしばらく使えないな……)
 ひとまず供物の状態に意識を向けてから、ため息をつく。完全に破損しており、自然回復はとても望めない。記述そのものを修復する必要があった。
(そのためにはリブロムが傍にいる必要があるんだが……)
 今なのはの傍からリブロムを離すのは危険だろう。となれば、修復は諦めるより他にあるまい。やれやれ、あのゴーレムは特注品――いわば切り札の一つだったのだが。
「大丈夫?」
 苛立ちを堪え切れず舌打ちしていると、薬箱を抱いたフェイトが、おずおずと言った。
「ああ。しばらくあのゴーレムは使い物にならないが……まぁ、相棒を取り戻せばな」
「そうじゃなくて。その……右腕なんだけど」
 ああ、そう言えば忘れていた。声にしないまま、他人事のように呟く。神経までやられ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ