第六章
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ができた。
「そうだよ。それ噂になってるぞ」
「噂?」
「そうだよ。御前と彼女ができてるんじゃないかなってな。どうなんだ、そこは」
「別に何も」
尚志は戸惑いを覚えながら彼に答えてきた。
「ないけれど」
「そうなのか?」
「うん」
尚志はまた答えた。彼にとっては寝耳に水の言葉だった。顔も今はじめてとんでもないことを聞いた、そう語っていた。
「本当に何もないよ」
「わかった」
真はそれを聞いてまずは安心したように頷いた。
「ならいい。問題はないな」
「うん。ただね」
「ただ?」
「一緒にいたいって思うね」
尚志の言葉は何気ないものだったがそれでも真にとってはそれで充分気付くことであった。彼はその話を聞いて眉を顰めさせてきた。
「おい、まさかそれって」
「それって?」
「わからないのか。御前やっぱり彼女のことが」
「一緒にいたいっていうのが駄目なの?」
尚志はまだわからない。しかし真はわかっていた。この差はあまりにも大きいがそれすらも尚志にはわからないものであった。
「だって僕達友達だし」
「友達か」
「うん」
何もわからないままこくりと頷く。頷く顔を見てもやはり何もわかってはいない。
「それだけだよ。別にね」
「だったらいい」
彼はそう言い捨てた。
「それでな。ただしな」
そのうえで付け加えてきた。
「友達以上にはなるなよ」
「別にならないよ」
彼の言葉は相変わらずであった。何もわかってないまま答えているしその顔も変わりはしない。
「そんなことは」
「じゃあそうしろ」
真は何もわかっていない彼とは違って真剣な顔で述べてきた。
「いいな、何があっても」
「わかったよ」
何もわからないまままた答える。
「それじゃあ」
「絶対にな」
彼の言葉は尚志に絶対を強いるものだったが尚志はそれもわかってはいなかった。そう、彼は何もわかってはいなかった。何もわからないまま若菜との付き合いを続けていた。これが彼を後戻りさせなくなっていた。
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