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愛は勝つ
第三章
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文章が違ってきているのである。従ってテーマもさることながら全く違う作品になっているのである。
「わかりにくいところがあるよね」
「そうよね」
 若菜もそれに同意する。学生では舞姫は結構読みにくいものがある。
「それに悲しい話だし」
「そうなんだよね」
 尚志もその悲しいというのには同意だった。舞姫は鴎外の若かりし日のベルリン留学での恋愛がもとになっていると言われている。
「あの人日本にまで来たそうだよ」
「そうなの。鴎外に会いに?」
「うん」
 尚志もそのことを若菜に言う。これは実際にあったことである。
「結局駄目だったみたいだったけれど」
「そうだったの」
「うん。帰るしかなくてね」
「実際に悲しい話だったのね」
 当時明治政府は有能な人材を欧州に留学させていた。その人材で国を発展させる為にだ。鴎外もその一人だったのだ。彼は医者として将来を期待されていたのだ。実際に彼は陸軍軍医総監にまでなる。当時は小説家としてだけでなく医者としても有名だったのだ。むしろ医者としての方が名が知られていたのかもしれない。
「そうだね。鴎外にも立場があったし」
「そのせいで別れるしかなかった」
「あの頃はよくあったそうだから」
 これも実際にあったことである。
「だから。結局」
「そういうの考えると舞姫って全然違って見えるわね」
「こうした小説って昔は多いわよね」
「そうだよね。太宰だって」
 太宰にも話をやる。
「自分の話をもとにしているのが多いし」
「そうね。ところでね」
「何かな」
 話はここで文学から少し離れた。
「松本君だったわよね」
「うん」
 尚志は若菜の言葉に応えて頷く。
「小説とか詳しいのね」
「別にそうじゃないけれど」
 謙遜しているがそれはわかる。彼は結構本を読んできているのは確かなのだ。
「よかったらね」
 若菜はそんな彼にまた言う。
「また教えてくれない?」
「小説のこと?」
「ええ。私好きだから」
 あらためて頼む。
「よかったらね」
「うん、いいよ」
 その言葉ににこりと笑って頷く。
「それじゃあね」
「有り難う」
 こうして彼は若菜と図書室でよく話をするようになった。これはやがて教室でもということになり話はすぐに皆の知るところとなった。皆尚志と若菜が仲良くしていることに驚きを隠せないでいた。

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