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愛は勝つ
第二章
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らしいんだよ」
「柔道八段!?凄いね」
「おまけに空手七段で合気道五段、少林寺拳法は六段か」
 それだけではなかった。話が洒落にならない方向にいっていた。ここまで来ると何をしている人間なのかわからない程である。
「何その人、化け物みたいじゃない」
「だからだよ。何でもな」
「うん」
「矢吹さんが転校してきたのもそのせいらしいんだ」
「お父さんのことで?」
「ただ強いだけじゃないらしいんだ」
 話はここで若菜に話が移った。
「娘に対しては凄い過保護らしいんだよ」
「そうなんだ」
「言い寄った男は全員投げ飛ばされるか拳の前に粉砕されてな。転校したのはストーカーしていたのがマジでボコボコにされたせいだったらしいんだよ」
「らしいの」
「ああ」
 あやふやで根拠のない話である。こう書くと真実かどうかはわからない。しかし真実かどうかあやふやなのがかえって怖いのだ。本当ならばかえって怖くはないものである。本当であるかどうかわからないのが一番怖いものだ。
「だから皆引いてるんだよ」
「そういう理由があったんだ」
「大変なことにな」
 真も諦めた感じだった。どうやら彼も結構彼女に気が向いていたようである。
「とにかくあの娘はジョーカーだ」
「声かけたら駄目だってこと?」
「そうなる。命は惜しいだろ?」
 真の言葉はかなり真剣である。
「そういうものなのかな」
「少なくとも御前は止めておけ」
 そう忠告する。
「プロレスラーでもなければ勝てないぞ。しかも一番強かった時機のアントニオ猪木でもなければな」
「ううん」
「わかったな」
 念を押してきた。
「といってもね」
 尚志は考える顔で首を傾げさせる。
「僕彼女のことは何も知らないしね」
「それもそうか」
 真はその言葉を聞いてふと気付いたように言う。
「彼女のことは何も知らないな。本当に」
「性格もどうなのかな」
 尚志はそこに注目していた。
「可愛いじゃないか」
「いや、それよりもさ」
 尚志はここで言う。
「性格じゃないかなって思うんだよ」
「おいおい、それはまた」
 真は尚志のその言葉に思わず苦笑いを浮かべた。
「顔よりもそっちか」
「性格って出るよ」
 尚志は少しとぼけていながらも述べる。ピントがずれているようでいて見るべきものは見ていた。

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