悪魔の島編
EP.17 デリオラ崩壊
[10/10]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
もできないのだから」
「だろうな。一介の魔導士と評議院のメンバーじゃあ、どっちを信用するかなんて誰でも分かる」
ましてや問題児の巣窟・妖精の尻尾の魔導士だ。そう言うと、ワタルは重心を落とし、いつでも攻撃を仕掛けられるように戦闘態勢を取った。
「――俺が現行犯でアンタを取り押さえない限りはな」
そんな彼に対し、ウルティアはあくまで自然体で、笑顔を崩さないまま話す。
「あら、私と戦るつもり?」
「アンタは怪しすぎる。何をしでかすか分かったもんじゃない。大体何で失われた魔法を使えるんだ? あれは――」
「あなたたちの魔法?」
「!(そこまで知っているか……いや、評議院なら当然か)」
そう言おうとしたわけではないが、ウルティアの言葉は的を射ていた。
黙り込むワタルに、ウルティアは鈴の音のような言葉を紡ぐ。
「失われた魔法。強力な効果と副作用を持つがゆえに秘匿された魔法。世間じゃそう言われているけど、実際は違うわ。本当の意味は言葉通り。大昔の争いで滅んだとされる者たちが使っていた魔法よ。それはあなたの方が詳しいわよね?」
「……ああ」
反論の余地のないウルティアの言葉に、ワタルは苦虫を噛み潰したような顔でうなずく。
苦痛のような感情で表情を歪めたワタルに、ウルティアは恍惚とした表情で続ける。
「フフフ……まあ、私が言いたいのはそんな事ではないわ。本題に入りましょうか」
「本題?」
「ええ、そうよ」
聞き返したワタルに肯定したウルティアは腰かけていた木の枝からするりと飛び降り、難なく着地。そのままワタルに歩み寄る。
ワタルは嫌なものを感じ、後ずさるも、背中がぶつかる。ちらりと見れば木の幹に背中を打っていた。
知らぬ間に退路がなくなっていることに舌打ちした瞬間……ウルティアの柔らかな手がワタルの頬を撫でる。
女性特有の感触だったが、ワタルが覚えたのは興奮ではなく、何故か寒気だった。
その正体を探り当てる前に、ウルティアの艶やかな声が耳を打つ。
「ねえ、ワタル……私と来ない?」
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ