悪魔の島編
EP.17 デリオラ崩壊
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でも裂くかのように、何の抵抗も無く断ち切った。
「え!?」
漏れた声はリオンの物か、グレイの物か……とにかく、2人にとっては信じがたい光景だった。それほどにまで、幼い日にデリオラに植え付けられたトラウマは彼らにその強大さを印象付けていたのだ。
驚愕はそれだけでは終わらない。いや、ここからが本番だった。
腕を断ち切った断面からデリオラの巨体にひびが入り始め、1分も経たないうちに全身が崩れていったのだ。
「なんてことはない。10年の月日は不死身の因果をも超えたという事だ」
「まさか、そんな……デリオラは、すでに死んで……?」
不死身の悪魔が死ぬ。
そんな矛盾に対するワタルの言葉に、リオンが呆然と呟き、俯く。
ワタルがそんな彼にしたのは頷く事だけだった。
10年間もデリオラと再戦することを望んできたのだ。すぐに受け入れろという方が酷だろう。
「10年間、ウルの氷の中で徐々に命を奪われ……俺たちはその最期を見ているというのか……」
ワタルの手裏剣はキッカケに過ぎなかったのだ。彼が手を下さずとも、遅かれ早かれデリオラは今目の前でそうなっているように崩れていったであろう。
否応にでもその事が思い知らされ、リオンは拳で岩を叩いた。
「敵わん……俺にはウルを越えられない」
師を超えるための、残された最後の壁が勝手に崩れ、涙を流すリオン。
その弟弟子、グレイはリオンの嗚咽を聞き、尚も呆然としていた。
「す、スゲーな、お前の師匠!」
ライバルであるナツの言葉さえまともに耳に入らない。
耳によみがえるのはかつて、師匠が最期にグレイに残した言葉だった。
『お前の闇は、私が封じよう』
幻聴かもしれない。
だが、かつてと変わらない、厳しくも優しい師匠の声に、温かい何かが胸にこみ上げてきたグレイは涙を抑える事が出来なかった。
「ありがとうございます……師匠」
顔を覆いながら嗚咽で震える声を聞こえないふりをしながら、ワタルは辺りを見まわした。
「(何だ……違和感? ……いや、何かが足りない?)」
胸に残る、喉に魚の小骨が刺さったかのような違和感に、周囲を注意深く見まわす。
既に欠片でしかないデリオラのなれの果て、月の雫によって溶けたウルの氷は川となって海に流れていく。おかしなものは……
「あ」
「なんか言ったか、ワタル?」
「あ、いや……エルザを探してくるよ」
「げ……そういやエルザも来てるのか……」
不意に違和感の正体が分かり、声を漏らすワタルに、ナツが聞き返す。
適当に誤魔化し、洞窟の外に出たワタルはすぐに駆けだした。
感じた違和感、それは――
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