暁 〜小説投稿サイト〜
FAIRY TAIL 星と影と……(凍結)
悪魔の島編
EP.17 デリオラ崩壊
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 別に反論の余地もあったし、しても良かった。あれはザルティを油断させるためとか、だ。
 だがそんなことは、ワタルにあっさりと流され、地団太を踏んでやり場のない怒りを示すナツの姿を見ていると、考えるのもばからしくなったのだ。

 一緒にいて楽しいと思えるナツ。それは始めて会った頃から何も変わっておらず、それがワタルにはほほえましかった。

「あ、ワタル! 今笑ったな!?」
「いやいや、そんなボロボロでよくそんな事が言えるなーって」
「こんなもん、怪我の内に入らねーよ!!」
「さいですか……ナツ、お前は変わらないな」
「な、何だよ急に……意味分かんねーな」

 急に暖かな表情になって笑うワタルに困惑するナツ。

 彼にとって妖精の尻尾(フェアリーテイル)とは家であり、そのメンバーは家族だ。
 もちろん、ナツが『父』と呼ぶのは育ての親であり、7年前に突如として消えたドラゴン・イグニールだけである。だが、そんな『父』に近いものをマカロフやギルダーツから感じているのも確かだった。

 そんなナツがワタルに対して抱く感情は『兄』に対するものに近いと言える。
 いつも自分の先を歩き、あの暴れん坊のラクサスすら一目置くその存在に羨望を抱いた事も一度や二度ではない。だがそれ以上に、ワタルの背中に並び、追い抜きたい、面と向き合って拳を合わせたい……そんな存在なのだ。

 そんなワタルがいつもの皮肉気な笑みではなく、純粋に穏やかな笑みで自分を見ている。それがなんだか照れくさかったのだ。


 対するワタルの内面は穏やかではあったが、そのさらに奥は複雑だった。

 『変わらない』と言ったのは嘘偽りのない本心からの褒め言葉だ。
 ナツの年齢が幾つなのか、正確に知っている訳ではないが、グレイあたりと毎日のように張り合っているのを見るに、精神年齢はグレイ彼らと同じくらいなのだろう。そのくらいの男なら、周囲の影響で幾らでも芯がぶれるのは必然だ。
 だが、ナツは変わらない。
 身に纏う爆炎のように荒っぽい気性もそうだし、仲間を想い、大事にするその心は穏やかな日の光のように暖かいままだ。

 それはいいのだ。変わらない方がいい。そうでないナツはナツではないとさえ言い切れる自信がワタルにはあった。
 だが、周囲に自らを取り繕う事が馬鹿らしくなるような陽気さは、ワタルには微笑ましく思う事もあるが……羨み、疎ましく思う事もあった。そして、その理由も分かっている。

 …………怖いのだ。いつか、自分の持つ『影』が光に暴かれ、それに対するナツ達大切な仲間たちの反応を見るのが。

 ワタルを暗い思考から引っ張り上げたのは、皮肉にも、その切っ掛けとなったナツだった。

「おい、聞いてるのかワタル?」
「そういうところが変わらない
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