悪魔の島編
EP.17 デリオラ崩壊
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ワタルが隙を作りナツが殴るという単純なものだったのだろうと、内心で失望の念を抱き、次はどうするのかと口を開きかけたが……硬直した。
身体中を岩で打たれ、空中で体勢を崩したナツが軽い破裂音とともに白煙となって消えたのだ。
「ぬ!?」
「ナツ!!」
「おう!!」
あまりに予想外の事に思考を硬直させ、次の一手を取りそこなったザルティが聞いたのは、煙幕から出たワタルの掛け声と……水が蒸発し、爆炎が弾ける音だった。
振り返れば、不敵且つ凶暴な笑みで身体中に着いた水滴を振り落とし、拳の炎の熱で蒸発した水蒸気を微かに纏う桜髪の青年の姿が。
拳を振りかぶって襲い来るナツの姿を認めたザルティは、今更ながら自分がワタルの策に嵌った事を悟った。
煙幕から出てきたのはワタルの作った変身魔法を使ってナツに変わり身(エルザとの模擬戦で使った実体を持たない出来損ないではなく、魔力を多く込めて実体を持たせた本来の変わり身だ)。
なら本物はどこにいたのかだが……身体中に水滴がついている事を見るに、デリオラの氷が溶けてできた小さな川に身を潜めていたのだろう。
煙幕と変わり身の二重の罠にはまったザルティはナツの啖呵を聞いた。
「そういや、俺にも時が操れるんだ」
「くぅ!」
間に合わない事を悟りながら、ザルティは防御態勢を取るが、ナツはお構いなしに拳を振るう。
「一秒後にお前をぶっ飛ばす!! “火竜の鉄拳”!!!」
「きゃあああああああああ!!」
「……女?」
ナツの鉄拳はザルティの頬を捉えて吹き飛ばし、岩に叩きつけた。その際に響いた甲高い悲鳴に、ワタルは眉を潜めて首を傾げたが……それどころではなかった。
「おい、ワタル!!」
「……なんだ?」
見るからに不機嫌そうな表情をしたナツが、掴み掛からんばかりの勢いでワタルに詰め寄ってきたのだ。
ザルティとの話は当然ナツにも聞こえている。
ワタルにとってあまり聞かれたい類の物ではなかったため、ワタルは気を重くしてナツに応えたのだが……それは杞憂だった。
「あの身代わり、なんだよあれは!?」
「あ?」
予想とはまったくの見当違いの言葉に、ワタルの口から気の抜けた声が漏れた。
ナツが何を言っているのか、いまいち図りかねたワタルが黙っていると、ナツが岩場で伸びているザルティを指差しながら怒鳴る。
「コイツのあんな攻撃、ヨユーで避けられたっての! それをあんな――オイ、聞いてんのか!?」
「あーはいはい、聞いてる聞いてる」
「ウガー! 納得いかねー!!」
あんな攻撃とは、ザルティがナツの偽物に当てた岩のシャワーの事だろうとは予想がついた。が、そんな事を言及されるのは予想外であったワタルは半眼で生返事を返す。
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