悪魔の島編
EP.17 デリオラ崩壊
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ナツの戦場における適応力は高い。
数えるのも億劫なほど戦い、その分だけ打ち負かしてきたワタルだからこそ、戦闘中の思考の柔軟さにおいて、ナツは自分に匹敵しうることを知っていた。
それが滅竜魔導士の持つ鋭い五感がなせる技なのか、はたまたナツの野性的ともいえるセンスによるものなのか、判断は付かなかったが今はいい。
問題は……
「クソ、ホントにキリがねーな……」
高い適応力を持つナツが未だにザルティの“時のアーク”に翻弄されている事だ。
向かってくる水晶を迎撃しようとすれば水晶自体の時を止める事で余裕を持って躱され、時を加速した水晶によって体を打たれる。なんとか破壊しても、次の瞬間には時間を巻き戻されて元に戻される……その繰り返しだ。
ザルティの変幻自在の攻撃に、ナツは苦戦していた。
手を出しあぐねているという点では、ワタルもナツと変わらない。
初めて対峙した失われた魔法は、なまじ知識として知っていた分、厄介だった。百聞は一見に如かずというやつだ。
加えて、使い手である仮面の魔導士の技量も厄介さに拍車をかけていた。
「随分と、戦い慣れしてるな」
使用しているのはたった一つの水晶。だが、ナツとワタルの2人を同時に相手取るザルティの表情には、余裕の笑みが張り付いている。ナツの攻撃に合わせて近接攻撃や投擲を仕掛けてはいるものの、攻撃の直前に水晶で出鼻を挫かれたり、悉く軌道を逸らされたりして失敗に終わっている。
それらが意味するのは、2対1にも関わらず、ザルティは二人の挙動を把握しながら絶妙なタイミングで魔法を使い、立ち回っているという事だ。
いかに強力な力を使用者に与える失われた魔法といえど、使い手が並以下であれば対処は容易いだろう、とワタルは高を括っていた。実際は相当な手練れだった訳だが。
「(だがそれにしては……)」
一定以上の実力者だからこそ放ち、感じる事ができる気迫、威圧感というものがある。自惚れではないが、実力者としての自負があったワタルもまた、妖精の尻尾のS級魔導士達やこれまで出会った他ギルドの強者たちと相対した時に、そうした気迫や威圧感を感じ、彼らに自分のそれを感じさせてきた。
だが、明らかに手練れの域にいるであろうザルティには、そうした威圧感を感じないのだ。
牙を隠すのが巧い? いや、そんなものでは感受性の強いワタルの嗅覚を誤魔化せはしない。
残った可能性を考えるなら、この仮面の魔導士が全然本気を出していないのは明白であった。
強力な力を持つ失われた魔法使い。
その正体は誰なのか、まさかデリオラの利用目的がその“力”だけであ
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