1.エルネスト・ルツ中佐編
第1話:開戦前夜
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こもうとする。
だがのどに詰まらせかけてしまい、グラスの水で慌てて流し込んでホッと息をつく。
「大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫だよ」
さすがに心配したメーゲンが尋ねると、レーマーは大きく息を吐いてから
返事をして、ルツの方に顔を向けた。
「別に自信があるわけではないんですけど、最近の空気はなんだか物騒な感じですし
訓練も妙に実戦的な内容なんで戦争、とかですかね」
レーマーが真剣な顔をして言うと、ルツは嘆息して小さく首を横に振った。
「戦争って、連邦を相手にか? まさか、あり得ないだろ。
国力差を考えれば勝てる戦いとは思えないし、デギン公王やギレン総帥が
それを判ってない訳が無いさ」
「そうですよ。 考え過ぎですって」
肩をすくめて冷静な口調で言葉を返すルツとルツの言葉に乗っかって
苦笑しながら諭すような口調で話すメーゲン。
2人の言葉にレーマーはやや恥ずかしげに頬を掻いた。
「まあ、そうですよね。 なんか考えすぎてたんですかね」
「だな。 お前さんの言うように最近の訓練は厳しいから過敏になるのも判るけど
戦争なんてめったなことを言うもんじゃないぞ」
「はい。気をつけます」
最後にレーマーは神妙な顔で頷きながら答えた。
小隊員の2人とともに夕食を終えた後、シャワーで汗を流したルツは、
自室のベッドに寝転がってぼんやりと考え事をしていた。
彼の乗り組んでいる”コリオラン”を含む艦隊は演習航海を終えて
明日にはサイド3に戻る。
そのあとはしばらく出動の予定もなく1週間の休暇が与えられることになっている。
ルツはその機を捉えて、実家に帰省するつもりであった。
実に1年ぶりの帰郷である。
「戦争・・・か」
だが、ルツの心は夕食のときにレーマーが口にした一言に囚われていた。
「ありえない・・・なんて言葉で流してしまえるほど、
今の情勢は甘くない・・・よな」
天井を睨みつけながら呟くルツも、最近厳しさを増した訓練に以前から同じような
予感を覚えていただけに、レーマーの言葉はルツに改めてその可能性について
考えさせる契機になっていた。
ルツの言う情勢。
彼の属するジオン公国軍、そのトップを務めるギレン・ザビ総帥の国内向けの
演説に含まれる連邦批判の語調が日に日に強まっていた。
それに引きずられるように、世論も連邦討つべしの声が高まり
連日のように連邦からの分離独立を叫ぶ市民団体のデモが報じられていた。
そんな中厳しさを増す軍の訓練。
レーマーやルツに限らず連邦との戦争が近いのでは、とのうわさ話は
親しい者同士などのあまり表面化しない形で静かに広がりつつあった。
その中には戦争が始まること
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