少女は龍の背に乗り高みに上る
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のやり方って奴をさぁ」
片目を細めてにやにやと見つめられ、悔しげに表情を歪ませる藍々。菜桜は母の楽しそうな様子に心底不快げだと顔を顰めていた。
「……馬一族と密盟を結ぶのが先決かと。同時進行で劉備との友好も深め、劉璋の退場に協力。後に荊州と益州、西涼の同盟を組んで他への対抗としたいッス」
具体的な案を示さずに、大きな流れだけかいつまんで話した。
細かい動きは部下達が決める、というのはこの時代の組織に於いて普通の事であるが、こと劉表相手では全く別。豊富な人生経験と明晰な頭脳によってどうすればそれを為せるかなど、彼女にとって読み解くのは容易い。
二人は喉が渇いていた。幾分の沈黙はそれほど重く、苦しい。藍々と菜桜は水分を求めようと生唾を呑み込んで、彼女の返答を待った。
「……キヒ、キヒヒ、あはっ! あーっはっはっはっ!」
突然、ケタケタと嗤う劉表の口はまた、引き裂かれていた。どんな答えに辿り着いたのかは、彼女にしか分からない。
「ははっ! 甘ぇ甘ぇ。蜂蜜りんごくらい甘ぇ。皆で手を繋いで仲良しこよしってか? 弱った漢王朝を復興させる為に菜桜と劉備で地盤を固める。曹操は一代の傑物だから死ねば崩れるけど孫家は根絶やしにしないと終わらない。
それなら擬似平和を作り上げよう。牽制のし合いの中、漢の偉大さを知らしめたままで本物の強者がどこかを誤魔化してうやむやにしてしまおう。今の命は大事だから、慈愛と優しさで民達を暖かくを包み込んでやろう。
そうすれば乱世は早く終わる……そして政略で足を引っ張り合う、内密に隠し持った軍事力の探り合いと牽制でビビり合う、ぬるま湯のせいで金と権力の欲望を膨らませたバカ共が牙を研ぎ合う、そんなどろっどろで最っ高な、混沌とした世界を次の世代の奴等に投げ渡す! ……キヒ……いい子ちゃんのお前らしい。やってみなければ分からない、なんて自分を慰めても、鼓舞する為の自己暗示でしかねーぞガキ共」
凍りつく、心の奥底まで。
自分の描く未来を言い当てられた上で真っ向から否定された。人の汚さを喰らい続け、蠱毒とも言える政治戦争を勝ち抜いてきた龍に。
「オレが生きられない世界がそんな楽しくなるってのはだりぃ……でもな、お前は見誤ってるなぁ、藍々。それじゃ間に合わない」
「え……こ、これが最速じゃないッスか? だって曹操は袁家との戦を行うし、孫策はあたし達の策でより長く内部掌握に時間が掛かるッスよ?」
素直に疑問を零した藍々に対して、同意だというように菜桜もコクコクと頷いていた。
はぁ、と劉表は大きくため息を一つ。
――“乱世如き”の話じゃねーんだよ。あの曹操に黒麒麟と鳳雛が付いたんだからそう上手くいくか、バカ共。このままじゃ泥沼の擬似平和になった瞬間に負けが決まっちまう。特
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