少女は龍の背に乗り高みに上る
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…成りあがってきた劉備と比べれば遥かに低いから、というのもあった。加えて真面目過ぎる事も劉表にとってはよろしくないようだ。
「好きなもん食べてなにがわりぃんだ。オレはもう甘いもんしか食わないって決めてんのー」
「ダメです! ほら、藍々も何か言ってください!」
「食べたくないって言ってるし、いいんじゃないッスかね」
菜桜の隣に居た少女――藍々が、如何にも適当な様子で返答を零した。
藍々……姓名は徐庶。肩で適当に纏めて流している藍色の髪に藍色の瞳、衣服は水鏡塾の制服を着こなし……彼女の友達の平坦な胸とは違い、ある程度膨らみがあった。身長も、竜と鳳よりも頭一つ大きい。
朱里と雛里の友にして水鏡塾出身のその子は、とある事情を以ってここで仕えている。
現太守は病に侵され、後継の菜桜は部下の掌握も薄いこの地に士官するなど、数多の智者の卵を育てる水鏡塾からの出身者としては異なこと。通常の思考をしていてはまずその狙いは読めないだろう。何か裏がある、と専ら上位の文官達の間では噂が立ってもいる。
しかしながら、この地をどうにか盛り立てようとしているのは事実。藍々が来てからというもの、この地の改善はみるみる内に進んでいるのだ。
劉表と菜桜はその頭脳への信頼から、まだまだ付き合いの薄い間柄ではあるが、真名も許しており、砕けた言葉も許容していた。
「もう! なんで私の周りにはこんな人ばかりなんですかぁ!」
「あー……うっせ……きゃんきゃん喚くな。とりあえず、久しぶりにオレを“起こした”って事は、大きな決定とかしなくちゃいけねーんだろ? ならお前らが立てた案を聞かせろ、ガキ共」
果実を一つひょいと手に持って、食べもせずに手で弄び始めた劉表は、喚く菜桜に睨みを効かせて静かに覇気を向ける。
劉表は病のせいでもう長くない。身体に走る痛みを鎮痛剤や睡眠薬で無理やり誤魔化して延命している始末。
彼女は命を失うわけにはいかないのだ。まだ、やる事が残っている為に。
だからこうして、娘や部下達が次の動きを決め兼ねた時にだけ“起こされる”。そして菜桜と藍々の意見を聞いてから、他の部下達の前に出て自分はまだ大丈夫なのだと見せつける。
そんな劉表は他のモノ達からこんな名で呼ばれている。
『賢龍』
学問を奨励し、多くの智者を集める事に尽力して、さらには才覚も飛び抜けていた為に、旧知のモノ達は彼女をこう呼ぶ。皇族の末裔でもある彼女に龍の名は似合っているだろう。
だが、その名で呼ぶ誰もが、彼女の本質を知らない。知っているのは古くから彼女を良く知る水鏡塾の塾長と、目の前の二人、客分として仕えているねね、そして敵対している孫呉のモノだけ。うっすら気付いているモノは曹操くらいであろう。
彼女から目を向けられて、ゾワリ、と肌が
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