第八十四話 リハーサルその九
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「それでもね」
「それが景子ちゃんの将来ね」
「そう考えてるのね」
「ええ、そうよ」
その通りだとだ、景子は答えた。
「将来はね」
「そうなのね」
「将来はなのね」
「そう、神社のことを勉強して」
そして、というのだ。
「神社の奥さんになるつもり。けれど」
「けれど?」
「けれどっていうと?」
「一つ気になることは」
それはというと。
「神社じゃないかもね」
「お寺とか?」
琴乃が景子にこう問い返した。
「そっちとか?」
「そう、若しかしたらお寺の奥さんになるかもね」
「そうしたこともあるの」
「ない訳じゃないのよ、これが」
「宗教違うのに?」
「だって。普通にお寺と神社付き合いあってしかも仲がいいから」
八条町のことだけでないというのだ、このことは。
「だからね」
「それでなの」
「そう、神宮寺とかあるから」
寺の敷地内にある神社だ、日本ではこうしたこともよくある。そもそも神道の主であられる天皇陛下も仏門に出家されていた国である。
だからだ、神社の娘でも寺に嫁ぐこともというのだ。
「あるかもね」
「そうなの」
「流石にキリスト教はないと思うけれど」
「それは幾ら何でもないでしょ」
「ええ、そう思うけれどね」
それでもだ、寺に入ることもというのだ。
「有り得ることとしてね」
「考えてるのね」
「そうしたことはね。とにかく私大学はね」
「宗教学部なのね」
「そこに進むわ」
このことはもう決めているというのだ。
「そうするわ」
「景子ちゃんも決まってるのね」
「何か私達だけ?」
琴乃に彩夏は三人の言葉を聞いてだ、あらためて自分達のことを思った。するとどうにも情けない気持ちになった。
そしてだ、二人で曇った顔で言うのだった。
「将来のこと考えてないって」
「やっぱり駄目よね」
「何となくってね」
「どうにも」
「そんなのこれから見つければいいじゃない」
景子がその二人にこう言った。
「これからね」
「そうなの?」
「これからなの」
「そう、これからね」
そうしたらいいとだ、景子は二人に言う。
「高校生活もまだ二年あるし」
「その間になの」
「探せばいいの」
「それに将来のことを決めてもね」
それでもだというのだ。
「その通りにいくなんて限らないでしょ。むしろね」
「その通りにはいかないものよね」
琴乃が言った。
「そうよね」
「そう、未来はどうなるかわからないわよ」
人間には、というのだ。神でも仏でもない身には。
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