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雲は遠くて
42章 信也の妹、美結に恋人できる
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ーピットになれるとはね。兄として光栄だよ。
あっはは。そういえば、涼太くんは、俳優やりながらでいいから、
できるなら、ロックバンドをやりたいって、歌もうたいたいって、
この前、会ったときにいっていたからね」

「だって、涼太くん、ロックやっているお兄ちゃんに(あこが)れてるんだもん」

「そうなんだよな。おれみたいに、作詞や作曲もやってみたいっていってたよ。
彼なら、それも可能だと思うよ。神経も繊細な芸術家タイプだからね」

「涼太くんには、いろいろと相談に乗ってあげてね、お兄ちゃん」

「もちろんだよ」

 美結は、ちょっと落ち込んでマイナーな気分のときに、
『いっしょに、がんばってゆこうよ』とやさしく話しかけてくれた
涼太の言葉を、なぜか、ふと思いだして、一瞬、胸を熱くする。

「じゃぁ、わたし、そろそろ出かけるわ。お兄ちゃんも、きょうは、
詩織ちゃんとデートするんでしょ?」

「まあね」と信也。

「Have a good time! (楽しく過ごしましょう!)」と美結。

 美結は、水色の無地ワンピース、花がらのスカートのファッションで、
マンションを出た。 

 下北沢駅から、明大前駅までは、京王井の頭線で1.9キロメートルである。
その区間の、新代田駅(しんだいたえき)東松原駅(ひがしまつばらえき)
止まらずに通過する急行に乗れば、3分であった。

 明大前駅の改札口で、沢口涼太(りょうた)は、美結を待っていた。

 沢口涼太は、エターナルの副社長の新井竜太郎が、この1月に立ち上げた
芸能事務所のクリエーションに所属して、人気を集めてきている新人の俳優である。

 2013年に、涼太は、京王線の明大前駅から7つめの仙川駅近くの、
名門の桐宝(どうほう)学園芸術短期大学の演劇専攻を卒業して、
順調に都内の会社に就職しながら、俳優としての道を模索していた。

 そして、運がいいのか、今年の1月、たまたま、渋谷を歩いていたら、
数多い芸能事務所の中の、クリエーションの担当者にスカウトされたのである。

この4月下旬、クリエーションで仕事を始めたばかりの美結に、いろいろと親切に
アドバイスとかをしてくれるのが、沢口涼太であった。身長は184センチと、
171センチの美結よりも、13センチいことも、美結にはうれしいことだった。

 現在22歳で、1992年、10月8日生まれの涼太は、21歳になったばかりの、
1993年、4月16日生まれの美結の、1.5歳ほど年上である。

「よっ、美結ちゃん!」

 涼太は、ちょっと()ずかしそうな表情で、長い睫の奥の、
キラキラしている涼しげな瞳を細めると、美結を見てわらった。

「涼太さん、お元気
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