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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第一節 離叛 第五話 (通算第45話)
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巻きにしていた《クゥエル》が動き出したのだ。シャアにもアポリーにも、彼らの心情は解る。誰だって目の前で、最新鋭機――しかも、《ガンダム》を奪われるなどという失態は犯したくない。だが、それはコロニー内で取るべき行動ではなかった。
「ついて来れるか?」
「は、はいっ。頑張ります!」
 多少の怯えと緊張の混ざった若者の声が応える。シャアはこの若者を無事《アーガマ》に辿り着かせる責任を感じはしたが、同時にそれは煩わしさでもあった。戦場では自分の命は自分で守るしかない。だが、シャアは多くの命を預かる身にならなければならない。この若者の命を守り抜くことで、過去のシャア・アズナブルとは違うクワトロ・バジーナになれるのではないか?何故か理由もなく、そう感じた。
「よし!アポリー、ロベルト、脱出するぞ!君は…」
「メズーン・メックスです」
「私はクワトロ・バジーナだ。メズーン君、ついてきたまえ」
「はいっ!」
 若者らしい元気の良さと真っ直ぐな性格を感じさせる声に、何故か不安を拭い去れないシャアではあった。
 ゆっくりと二機の《リックディアス》に引き上げられて《03》が宙に浮く。四機のMSはそのまま上昇しつつ、重力を振り切ると、侵入孔へと急いだ。当然のように、三機の《クゥエル》が追撃の体制を取り、シャアたちの後を追った。
「トリモチに気を付けろ!」
 シャアが接触回線でメズーンに指示を与える。いつの間にか《03》をアポリーに預け、メズーンのフォローに回っていたのだ。メズーンの操縦はお世辞にも上手いとは言えなかったからだ。
(このままだと、不味いな…)
 シャアは後詰めを呼び寄せることを考えていた。カミーユやレコアがいれば、メズーンを守りつつ後退することも可能だろう。それには、先ずトリモチを潜り抜けさせることだった。
 敵が待ち受けるにはコロニーを出た所に伏せているのが一番であるが、今回の場合、時間的にそれはない。艦艇の出撃がそれほど短時間でできる筈もない。先回りされる心配はなかった。だが、メズーンの操縦では後ろから狙撃されるのがオチである。ましてや、アポリーは《03》を抱えている。機体の制御は普段より鈍い。
「どうしたものかな…」
 盲射ちの《バルカンファランクス》で追撃隊を牽制しながら、《02》を誘導する。自らが最後尾についても全機の安全を確保したかった。
 シャアの見守る中、危なっかしくも侵入孔から《02》が宇宙へと出た。続けてシャアも抜ける。と同時に、ロベルトが侵入孔に向かってトリモチを連射した。シャアもそれに加わる。瞬く間に侵入孔が塞がり、三機の《クゥエル》の姿は見えなくなった。
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