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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第一節 離叛 第四話 (通算第44話)
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がシャアに訊ねた時、《ガンダム》が視界に入った。さすがに発砲はしてこないものの、牽制していることは明らかだ。肩には《03》のナンバリングが施されていた。
「それ以上近づくな!近づけば撃破するぞ!」
 拡声器を使ったのだろう。まるでMSが喋ったようであった。《03》が、シャアに狙いを定めてビームライフルを構えている。
「ちっ!」
 シャアが短く舌打ちした。虚を突かれたことは事実である。アポリーにはシャアの苛立ちが解った。このパイロットは本気だ。目の前で新型を滷獲されないためには仲間の命さえ必要な犠牲だと思っているのだ。
「では、君は我々が撤退するのを追撃しないと約束できるか?」
 シャアは動こうとするアポリーを制して無線で語り掛けた。《リックディアス》には拡声器などという地上用の装備はない。このことからも《ガンダム》が再び汎用機として新世代の総ての機体の祖となるべく設計されたことが解る。ジオンは必要な機体を必要に応じて設計していくのに対して、連邦は次の世代を睨んで試作を行う。
――国家の体制の違いと言えばそれまでだが、学ぶべき点ではあるな……。
 シャアの問いに対して敵は返答を躊躇している。上官と連絡をつけているのかも知れない。そう考えたその時――もう一機の黒い《ガンダム》が《03》にタックルした。
「そこの赤いモビルスーツ!」
 派手な砂煙を挙げて二機のMSが縺れ合う。下敷きになったのは新たに出現した《ガンダム》の方だった。予想外の展開にシャアもアポリーもティターンズのパイロットさえも呆気にとられていた。唯一、黒い《ガンダム》のパイロットだけが正気を保っていた。
 起き上がった機体には《01》と描かれている。その《01》が僚機である《03》にビームライフルの銃口を突きつけていた。
「エゥーゴなら味方する!」
 若い、まだ青年になりきっていない若者の声だ。シャアはここで明かしていいかどうかの許可を得てはいなかったが、エゥーゴの仕業であるという事実の証をつくるのは悪くないと考えた。
「助かる。では、《03》のパイロットには降りていただこう」
「エマ・シーン?何の冗談だ」
 シャアにビームライフルを突き付けられた《02》のパイロットが《03》のパイロットに語り掛けた。
「カクリコン中尉、申し訳ありませんが、自分はエマ・シーン少尉ではありません」
「貴様っ!エマをどうしたっ!」
《03》のパイロットは、銃口をコクピットに寄せる仕草で降りろと促した。
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