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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の休息篇
30.神意の思い出
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せずに担任教師が話を始める。
「まぁ、少しは耳に入ってると思うが、今日このクラスに転校生が来る」
生徒たちがざわつき出す。
「ホラ、静かにしろ。とりあえずもう入ってもらうか」
この教師はかなりの面倒く下がりやさのだ。
だが、その性格は彩斗と似ているところがあるのでこの教師のことは、他の教師に比べれば好印象だ。
「それじゃあ、入ってこい」
教師の合図で開け放たれた扉から人影が入ってくる。
その瞬間だった。
……ノイズが走った。
「……えら、紹……。転、校……だ」
教師の言葉が激しいノイズに邪魔されて聞こえない。世界の色が奪われる。視界にもノイズが走っていく。
そして記憶の扉は閉ざされていった。
「ん……ぐっ!」
激しい頭痛に襲われ、頭を押さえる。
「大丈夫、彩斗君!?」
「彩斗さん!」
向かいの席に座っていた友妃が身を乗り出して慌てる。夏音も普段では聞かないような慌てた声を上げる。
「だ、大丈夫だ」
頭を押さえながら彩斗は先ほどの記憶がいつ頃のことだったか思い出す。
あの記憶は本土にいた頃のものだ。
中学二年の春のこと。多分だが、始業式のことなのだろう。
なぜそんな記憶の扉が強制的に閉められたのだろうか。あの頭の痛みは、過去の“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”に触れたときに起きる症状だ。
だが、彩斗が吸血鬼の力を手に入れたのは、一年と少し前のことだ。
それなのにあのときの記憶は彩斗に思い出させることを拒んだ。
つまりそれは、あのときに彩斗は“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”に関する何かに触れたことになる。
あのときが本当の初まりだったのかもしれない。
「ごめんなさい。ボクのせいで変なこと思い出させちゃったみたいで……」
友妃はうつむき、落ち込んでいる。
「別に逢崎のせいじゃねぇよ。それに……」
一呼吸おいて口を開く。
「これはいつか絶対に思い出さなきゃいけないことだ。何があっても」
どうして自分がこんな力を手にしたのか。
それは思い出さなければならない彩斗の義務だ。
「そのとき俺だけの力じゃ無理だってときは、二人とも協力してくれよな」
彩斗なりに不器用に笑みを浮かべる。
「うん。絶対協力するよ」
「私も彩斗さんの力になりたい、でした」
二人は笑顔でそう言ってくれた。
それだけで彩斗は安心する。こんな平和な日々がいつまでも続けばいいと思い、彩斗は目の前の汁を吸って伸びきったラーメンを啜るのだった。
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