暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第十二章 妖精達の休日
幕間 青い薔薇
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
風に笑って……。

 傷付けた相手が笑うのを見て、そんな優しい顔で……。

 あなたが浮かべる笑みには、偽りがない。

 心の底から喜んでいるのが分かる。

 それが、わたしには―――分かってしまった。

 分かってしまって―――知ってしまった。

 あなたは―――……。

 ……あなたが―――壊れていると言うことに……。

 人を救うため身を―――命を投げ出す………それは、全くない話ではない。

 でも、それは家族や恋人、友人など自分にとって大切な人を救うためで……関係のない、赤の他人のため命を投げ出してまで救おうとするなんて……それも一度や二度じゃなく、何十、何百と……。

 そんなの……狂っているとしか言いようがない。

 誰しも自分が大切で、死は恐ろしいもの。

 例え愛する人の命を救うためでも、自分の命をかけるとなれば、誰もが躊躇する筈。

 なのに、あなたは微塵も躊躇うことなくたった一つの命をかける。

 言葉も交わした事もない、赤の他人のために……それは、強さなんてものではない。

 ただ、壊れているだけ。

 人として……生き物として……。

 ぁぁ……シロウさん……歪で……壊れて……狂った人……。

 まるで、あなたは……心のない……ただ人を救うだけの人形のよう……でも………違う。

 わたしは見た。

 救った相手から罵倒され、憎まれ、傷付けられる度、あなたの心は傷付くのを。

 何も感じていないわけじゃない。

 傷付けられる度に、あなたが見えない涙を流しているのを―――声なき慟哭を上げるのを―――わたしは見ていた。 

 何度も傷つき、倒れ、その度に立ち上がり、あなたは進み続ける……救うために。

 何も感じていない理由じゃない。

 悲しみ、怒り、苦しみ、泣き、叫び……それでもと、あなたは立ち上がる。

 
 

 

  



 そんな誰よりも強く、そして弱いあなたを、わたしは守りたい。

 どうすればいいか何て分からない。

 でも―――ただ、守りたい―――その思いが、衝動となってわたしの心を大きく揺さぶる。

 ……わたしは弱く、小さく、何も出来ない……でも、それでもわたしはあなたの力になりたくて。

 きっとあなたはそんな事は望まない。

 だから、これは我儘。

 わたしの我儘。

 強く、硬く、強靭なあなたの、その奥に隠された繊細な硝子のような心を守りたいと思う――わたしの我儘。

 あなたに助けられたからじゃない。   

 あなたに救われたからじゃない。

 理由なんて分からない。

 ただ………そんなあなたを守りたいと。

 声を上げるわたしがい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ