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雲は遠くて
9章 恋する季節 (2)
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ランニング・ベースに、気合(きあい)を入れた。

森川純のドラムは、リンゴ・スターのようで、
ノリと、心地のよいリズムで、軽快だ。

岡林明は、切れがいいカッティングや、
ソロ・フレーズをジョージハリスンのように、
華麗(かれい)()いた。

松下陽斗が(かな)でる、グランドピアノは、
ジャズふうな即興(そっきょう)で、
ビートルズ・ナンバーに、
(あた)らしい、楽しさ、すばらしさを
花添(はなそ)えているかのようだ。

メンバーの、(いき)()った、コーラス(合唱)の、
ハミングや、リフレインは、()まっていた。

そんな快調な演奏は、無事に続いた。
10曲までは、すべて、ビートルズナンバーの
演奏であった。『ガール』『ミッシェル』『イエスタディ』
『レット・イット・ビー』『エリナー・リグビー』
『ヘイ・ジュード』『涙の乗車券(Ticket To Ride)』など。

そして、後半の10曲は、ミスター・チルドレンの
『イノセント・ワールド』や、スピッツの『ロビンソン』や、
アジアン・カンフー・ジェネレーション、
宮崎あおいの『ソラニン』とかであった。

鳴り止まない拍手の中、21曲目のアンコールは、
ナオト・インティライミの『恋する季節』だった。

幾千(いくせん)の・・・愛の言葉も・・・
たりない・・・この思い・・・
あらゆるものから・・・君を(うば)いたくて・・・
さびしくないさ・・・君とめぐりあえたから・・・
奇跡(きせき)・・・?
奇跡は・・・おれにはあるのだろうか・・・?

自分が、メインになって、
シャウトしながら、(うた)う、
『恋する季節』の歌詞が、まるで、
いまの自分の気持ちを表現しているようで、
やけに、胸にしみる、川口信也だった。

≪つづく≫ 
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