暁 〜小説投稿サイト〜
アリアドネの糸
第一章
[3/3]

[9] 最初 [2]次話
た。
「アテネのだな」
「御存知でしたか」
「噂はここにも及んでいる」
 王は厳かな声でテーセウスに述べた。
「幾多の悪人共を成敗してきているな」
「はい」
 テーセウスも頭を垂れてそれを認めた。既に彼はアテネ王の息子としてだけでなく多くの悪人達を成敗した勇者としても知られるようになっていたのである。
「世の人はそう噂しているようで」
「噂ではない」
 王は今のテーセウスの言葉は否定した。
「事実ではないか。まごうかたなきな」
「そう言って頂き恐悦至極です」
「そしてだ」
 ここまで話したうえで話は本題に入った。
「今日ここに来た理由は何か」
「ここにですか」
「そうだ。ただ謁見に参っただけではあるまい」
 王もそれはわかっていた。あえてそれを彼に聞くのであった。
「それは何だ。話すがよい」
「ラビリンスです」
 テーセウスは片膝をついたままで顔を上げて王に答えた。
「それを見事潜り抜けてみたいと思いまして」
「ラビリンスをか」
「そうです。是非共」
「ふむ」
 王はそれを聞いて考える顔になった。その顔をした後で今度は己の左手に控える美しい娘を見たのであった。

[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ