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雲は遠くて
3章 家族
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れも(かず)ちゃんも少年のころから抜け出せないだけかな。
なあ、和ちゃん」と森川誠。

「まあ、そういうことになるだろうね」と清原和幸。

森川誠と清原和幸は、少年のようにわらった。

清原和幸と森川誠は、同じ年で、
小中高まで、学校も同じで、幼なじみ、遊び仲間の、
無二(むに)の親友だった。

森川誠の足もとに、白に(うす)い茶色のまじった毛の、
6歳の(めす)のポメラニアンが(にお)いをかぐように、
すりよってくる。

「ラムちゃん、元気かな。夏向きに、きれいに毛をカットしてもらったね」

森川は、ふさふさの長い毛の、しっぽをふる、ポメラニアンのラムを、
ちょっと、なでる。

朝と晩の、ラムの散歩は、雨の日以外は、必ず、
家族の誰かとする日課であった。

散歩のコースは、クルマの少ない静かな小道だった。

1週間に1度のペースで、スローなジョギングをする、
森川誠や清原和幸たちのコースと、ほぼ同じ小道だった。

ふたりは、30代後半あたりから、タバコをやめて、
健康のために、時には、一緒(いっしょ)にだったり、
個々にだったりと、ジョギングを始めた。
ふたりは、白髪が、ちらちらと目立つ今も続けている。

リビングの(なか)ほどにあるキッチンでは、
美樹と姉の美咲(みさき)が料理をつくっていた。

「こんにちは、森川さん」と美樹はいう。

「こんにちは」と美咲。

美樹と美咲は、笑顔で挨拶した。
姉の美咲は、大学を卒業したばかりの、23歳だった。

「いま、おいしいものを、つくってますからね」と美咲。

「よろしく、お願いします、美咲ちゃん、美樹ちゃん。
二人(ふたり)は、いつのまにか。おとなっぽくなって、
ますます、きれいになっていくから、
いつも、お会いするのが楽しみなんですよ」

森川誠は、ちょっと足を止めて、姉妹を見つめた。

「森川さんったら、()めるのが、
上手(じょうず)なんだから」と美咲はわらった。

「ほんと、ほんと。あぶない、あぶない。
女性のあつかい上手な森川さんは、ちょっと危険な感じ」
といって、美樹もわらった。

「あら、あなたたち、なんということをいっているの。
森川さんは、本心しか、お(はなし)なさらないのよ。
いつだって、真実、ひとすじで、とても誠実な社長さんんだから」
と母の美穂子は、自分もこみあげそうな、
わらいを()さえるようにして、そういった。

「真実ひとすじですかあ。ははは、まいった、まいった」

森川誠は、大きな声でわらって、照れるように頭に手をやった。

美穂子と美咲と美樹が料理をつくっているキッチンの隣には、
椅子(いす)が8つと、四角(しかく)
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