蘭子『それはきっとやきもちやいてるんだよ』
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方ない、これが結果なんだって割り切ってた。
けど、兄貴は壊れた。私が失敗した時以上に壊れた。
今思うと、私は本当にズルい人間なんだと思う。だって、兄貴が小さな挫折をして、それを『兄貴を矯正する』なんて名目で利用して再び関わったんだから。真正面からぶつからずに、きっかけを待ったの。
でも、そのおかげで兄貴と普通に話せるようになった。少しずつ兄貴は過去のしがらみから解放されて、新しい目標を作る事が出来た。あっちは私のおかげだと思ってるんだろうけど、私は手助けしただけだしね。
今の兄貴は、昔の兄貴に戻って来てる。これまでの兄貴はどこか焦ってて、不安げで見てるこっちが危ないなって感じる程だった。怪我した時なんて、人生が終わったような落胆の顔してたし。
けど今は変わった。唯一昔と異なるのは、素の笑顔を浮かべているところかな。私が小学生の頃の兄貴は、どこか影のある笑顔だったのを覚えてる。なんか、辛そうにしてた。
でも、だからこそ。だからこそ、今兄貴に甘えちゃいけない。ここで兄貴に無理な負担を掛けちゃいけない。
分かってる。私が怒り続けると兄貴も元気が無くなることぐらい。このゴールデンウィーク、私が機嫌悪くて部屋から出なくても、兄貴はカラオケに誘ってくれたり、一人でマイクを探しに飛んで行ってた。謝って許されないなら、行動して認めてもらうしかないってことを、兄貴は知ってるんだ。
そこまで理解しておいて、いまだに駄々をこねてる自分が情けない。兄貴に構ってほしいと思ってる自分が許せない。
確かに、兄貴は自分が成すべき事がありながら、本山由実の猛攻に気圧されて振り回された。兄貴の性格だから、この前私に警告されて今度はちゃんと断れた筈。それでも断り切れない何かがあった。多分、あの腹黒女は、兄貴の弱点か何かを突いて無理矢理行かせたんだと思う。兄貴が否定する事が出来ない状態なんて、それぐらいしか無い。
そもそも、あの女は何で兄貴に付きまとうの?まさか、自分に対して振り向いてくれないからとかいうビッチ臭漂うイカれた考えじゃないよね?
どちらにせよ、今の私はこれまでと対応が違い過ぎる。五十嵐さんの通りなら、私はやきもちを焼いてる。だから、こんなにも正直になれない。
明日は学校だ。朝から兄貴とは一緒なのに、私はどこまでバカなんだろう。
きっと、また冷たい態度取って兄貴を困らせてしまうんだ。
……あ、でも一つだけ方法がある。
これも兄貴を困らせる事だけど、これなら別に困ってくれて構わないかな。それに、本山由実に対する牽制にもなるかも。
まぁ、私がちゃんと兄貴に向き合えたらの話だけど。
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