志乃「兄貴なんて知らない」
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んな会話が終わり、志乃が階段を上がってくる音がしたところで、俺は部屋を出た。
そして、丁度二階に上がり終えた志乃と目を合わせる。志乃は訝しげに俺に問い掛ける。
「兄貴、何か用?」
その様子に、話は通じると感じ、俺は昼頃の事を謝ろうとしたのだが――
「女とイチャイチャして重要な事をほったらかす兄貴なんて知らない。早くそこをどいて」
それだけを俺に言い、横を通り抜けていく志乃。言葉を返すのも許さないといった圧力を志乃の目から感じた。俺の視界の先で、志乃が自室に入り、おもむろにドアを閉める様子が映し出される。
やらかした。それが俺の頭に浮かんだ最初の言葉だった。俺の考えが甘かった。謝れば許してもらえる。この世はそんな甘い世界じゃないのだ。それを剣道を通して学んだ筈なのに。俺は、その事を志乃を対象にして考えていなかったのだ。志乃なら何とかなる、志乃なら許してくれると、内心どこかで思ってしまっていた。
妹だから、余裕だったのか?兄だから格が高いのか?兄妹だから心の範囲は広いのか?そんな筈あるか。他人だろうと血の繋がった関係だろうと、許してもらうために必要なのは、謝る事だけじゃ無いのだ。
部屋に戻ってベッドに飛び込む。心は至って静かだった。でも、それは冷静なんじゃなくて、志乃の見捨てさせてしまったという後悔からくるものなのかもしれない。
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