志乃「兄貴なんて知らない」
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の陽射しが当たり、テーブルがわずかな暖かさを浴びている。
顔を元に戻すと、そこには俺と同じく顔を硬直させている本山がいた。俺が肩を叩くと、本山はビクリとして我に返り、「今葉山志乃さんいたよね?」と聞いてきた。
俺は頷き、さっきの志乃の顔を思い出す。
徹底的、圧倒的、絶対的な無表情。無表情キャラ決定戦にいたら確実に優勝狙える程のあの顔。そこに感情の色は無く、旧世代のロボットを彷彿とさせる。じっと、俺の顔を、目を覗き込んでいるだけだった。
あいつは何故あそこにいたのか。決まっている。マイクを探すためだ。俺と違う場所を探し、連絡を取り合い、目的のマイクを見つけ出す。それは俺が言いだした事だ。
それなのに、俺は携帯を忘れ、挙句の果てにクラスの女子と喫茶店でのんびりお茶をしている。
なんてバカなんだろう、俺は。自分の今後に気を取られ、本来やるべき事を後回しにしてしまった。簡単に言えば、最初に誘った友達がいるのに、後に誘われた友達と遊ぶようなものだ。
志乃は俺に電話をしたのかもしれない。それでも俺は出ない。仕方なく街を歩いていたら、俺の姿を発見した。その結果、怒りを通り越して『無』になってしまったのだ。
俺は自分の恥を思い知る。何故あの時、マイクの優先権を自分の今後よりも下にしてしまったのか。後悔と自分自身に対する怒りが止まらない。
俺は無理を言って本山と別れ、駐輪場の自転車を取り出してペダルを漕いだ。とりあえず、家に帰ろう。志乃がいたら謝る。謝って許される事じゃないのは分かってる。でも、一度だけでもちゃんと頭を下げたい。
あいつからすれば、さっきまでの俺は女子と遊んでいるようにしか見えなかっただろう。いや、俺は無理矢理と思いながらも、本山と遊んでいたんだ。あいつに何を言われようと、俺は弁解の言葉を投げかける事は出来ないのだ。
ずっと足に力を入れていたからか、自転車を漕ぐスピードが遅くなってくる。でも止まらない。少しでも早く家に着き、志乃に土下座をする勢いで謝るのだ。もしかしたら志乃はまだ家に帰ってないかもしれない。なら、家に帰ってから謝る。何か命令されたら、聞ける範囲で聞いてやる。もう兄のプライドなんて知ったこっちゃない。
だって、俺が悪いんだから。
*****
志乃が家に帰って来たのは、夜の八時だった。
今まで志乃がこんなに遅くまで外出していた事は一度も無く、母さんや父さんが少し強めに注意していたのが聞こえてきた。
「志乃!今までどこブラブラしてたの!誰かに襲われたりしたら危ないでしょ!」
「……ごめん」
「お前は女の子なんだから、ちゃんと自分の危険を理解しておかないとダメだぞ!」
「……ごめんクソ親父」
そ
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