志乃「兄貴なんて知らない」
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は、人間関係を揺らがせるからね」
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全国チェーン店として経営している喫茶店ズタバは、各々のメニューの値段がその辺の店よりも張るが、それに見合う美味しい商品を提供しており、各店舗で多くの常連客を作り出している人気店だ。喫茶店なので席があまり多く用意されていないので、母さんはいつもお持ち帰りで買っていた。
昼頃という事もあり、店内は人でごった返していた。レジには常に人が列を生み出しており、店員が忙しそうに仕事をこなしている。俺達も列に加わり、注文したのだが、席が空かないため、お持ち帰りの人を先に回す事になり、数十分ののち、ようやく品を持って座る事が出来た。
こうして椅子に座るのは自転車を漕いでいた時以来だ。あれから本山にいろんな所に連れられ、足を休める時間すら無かった。
文句を言おうと本山を見ると、あいつも疲れた顔をしていた。どうやら、あいつも歩きっぱなしで足に疲労が溜まっていたようだ。そうならそうと言ってくれればいいのに。
俺らが座っている位置は、デパートの中にある店の外側――ガラスに近い席で、駅前を歩く人達から丸見えだ。だが、俺達に気を留める奴がいるわけでも無く、俺達はただただくつろいでいた。
すると、本山が俺に問い掛ける。
「ねぇ、葉山君の用事って何?」
ああ、そういえば言ってなかったな。さっきビッゴカメラ行った時は離れるなってうるさくて見れなかったし、そもそもこいつが俺に用事を言わせる機会を作ってくれなかったんだよ。今頃って感じだ。
けど、ここで意地を張るのも面倒なので簡単に説明する。
「マイマイクだ」
簡略しすぎたかも。
「何それ。日本語で話してくれると嬉しいな」
こりゃ自滅した。俺の所為だとしても、余計ウゼェ。
頼んだコーヒーを口に含み、乾いた口内に水分を行き渡らせる。そしてもう少し中身の詰まった説明をしようとした時だった。
突然ガラスの方が急に暗くなった。あれ、おかしいな。たった今まで太陽の光が当たってたのに。それに今日は雨が降るなんて予報はされてなかったぞ。
それいついて聞こうと、本山の顔を見る。だが、本山はこっちを見ておらず、ガラス側を見ていた。その顔は素で驚いた表情をしていた。
何か虫でもいるのかと、特に何の心配もせずガラス側を向いたのだが――そこで俺は全身が怖気で震えるのを感じた。
そこにいたのは、虫でも怪物でも有名人でもマフィアでも総理大臣でも無い――今までの中で一番無表情を浮かばせた、我が妹だった。
*****
どれ程の時間が経っただろうか。
気付いた時には志乃の姿は消えており、俺の視界の先には、それぞれ違う空気を纏った通行人達が街を踏みしめていた。太陽
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