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相棒は妹
由実「葉山君って、本当に変わってるよね」
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、待ってよ」

 後ろから不安げな本山の声がする。いやぁ、ここで振り返って突っ込んで行けばカッコいいんだろうなー。それか、突然ビルの陰から俺の仲間が登場してチンピラを負かしてやるとか。

 でも、残念ながらそんな優しい展開は無いんだな。

 「おいおい、あいつお前を見捨てっちゃったぜ」

 「代わりに俺らが可愛がってあげないとじゃね?」

 「それなー」

 そんなチンピラ達の声が、下卑た笑い声と共に聞こえてくる。

 俺は早めに自転車を漕ぎ、周囲から逃れる。その光景を見ていた人達に批判的な視線を送られたが、別に気にしない。あいつの自業自得なんだし。というか、お前らが俺にそんな目を向ける事出来るのかよ。話しかける以前に逃げたくせに。

 そんな事を考えながら、本山達のいる道の一つ隣の道路をのんびりと漕ぐ。ビルを挟んだ隣の道から本山の悲鳴が聞こえてくる。

 だが、その次に聞こえてきたのは、先程のチンピラの怒号だった。……って、どういうことだよ?

 自転車の速度を落としながら走っていると、「ぐあっ!」「てめぇぁ!おぶっ!」「グボケァ」などという苦痛に訴えるような悲鳴が耳を打つ。

 何が何だか分からない。でも見に行きたいとは思わない。俺はペダルを勢いよく押し、その場を離れる事にした。

 そして、十字路に差し掛かり、それを左に曲がろうとしたのだが――

 「葉山君って、本当に変わってるよね」

 十字路の右方向から、楽しげな声が聞こえてきた。そして、声の主と目が合う。まるで透明の糸で縛られているように、俺の身体は硬直していた。

 びっくりしたんじゃない。恐怖したのだ。

 声の主――本山が拳から赤い液体を垂らし、白いTシャツに赤い斑点を付けながら、いつも通りに笑っているのが。

 そして、本山は自分の状態など気にせず、まるで文化祭に好きな人を誘うように笑顔で言葉を紡いだ。

 「葉山君、これから一緒にお出かけしない?」
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