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【短編集】現実だってファンタジー
デフォルト・フェイス
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だった。多数の方がフォリンを得て、少数に行ったプレイヤーは何ももらえない。予め示し合せれば誰でもフォリンを得られるシステム。何が面白いのだろうか。お小遣いを待つ子供じゃあるまいし。

運営タワーの上層にあるモニターが結果を発表する。内容は「犬と猫とどちらが好きか」。私はどちらも好きだったので何も入力しなかった。このような出来レースに参加するのも馬鹿らしいし――

「って、あれ?」

犬、ゼロ。猫、ゼロ。これは一体どういう事だろう。誰も入れていない?
その後も次々に質問が出たが、いずれも回答数はゼロが続く。呆気にとられて見上げていると、デフォルトフェイスの一人がこちらに近づいてきた。

『驚きましたか?』
『>>とても』
『先ほどの言葉を受けて、私たちの内部で分裂が起きました。共感する者もいれば今までで通りを続けたいものもいましたが、意見はまとまりませんでした』
『>>でしょうね。容易に想像がつきます。でも、そうならばなぜこのような結果に?』
『一部の人達が扇動を始めたのです。このゲームを続けるためにやむなくデフォルトフェイスになっていた人たちが、運営のマジョリティ・ゲームなしで通貨を得られるシステムに変えるための抗議活動をしようと』
『>>誰も止めなかったの?』
『一人が言い出せばフレンドの20人に伝わります。その考えに共感した人が同じ発言をすればそれが別の約20人に。後は連鎖爆発です。運営が何故こんなオンラインゲームを、何所から利益をねん出して続けているのかは不明ですが、プレイヤーが行動をしなければゲームは止まっているのと同じことです』

不気味な無表情が、心なしか先ほどまでのデフォルトフェイスと違う印象を受ける。
その理由を探して、ひとつ気付いた。

『>>ふーん……ちょっとだけ見直した』
『恐縮です』

話しかけていた彼には、クローズチャットのアイコンは出ていなかった。

こうして「Default」というオンラインゲームは一度崩壊し、運営はここに至って初めて声明を出した。曰く――数か月後、この「Default」は「間界都市ウタカタ」というバトル要素の加わったゲームへと大幅改造するのでテスターを募集する、とのことだった。

デフォルトフェイス軍団は翌日より少しずつ個性あるアバターへと変化していき、「間界都市ウタカタ」が始まる寸前にはデフォルトフェイスはほとんど残っていなかった。

人は孤独と未知を恐れて身を守ろうとする。だが慣れてしまえばその欲望は何かのきっかけで噴き出す。その欲深さはある意味で、人間が人間らしいという事なのだろう。
 
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