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【短編集】現実だってファンタジー
デフォルト・フェイス
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クローズチャットでもフレンド全員がメッセージを見る事が出来ます』

文章を送る都度、彼は誰かとチャットで何らかの内容を送ったり受信したりして、若干の間をおいて返答を行っている。毎回毎回、私の送った文章を吟味した彼のフレンドが意見を送っているのだろう。彼はそれを基に多数派(マジョリティ)な回答を探しているのだ。

「なにそれ……何でそんなシステム勝手に作っちゃってるの?」

PCの前で軽く呻く。彼らの言っていることは日本語として理解できるが、意図が全く掴めなかった。そもそも何故人間関係をシステム的に決めているのだろう。人間には好き嫌いがあるのだから、気が合う人間と組んで気の合わない人間はさよならすればいいだけだ。それが一番後腐れがない。

「人間の意志なんてそう画一的になる訳が無い……こんな自由の無いルール、長続きする訳ない」

ひょっとして、これこそが「マジョリティ・ゲーム」なのだろうか、と疑問が頭を過る。しかし、運営がイベントを開くと予告した時間にはまだ早い。つまり彼らは元々こうなのか、それともこれが「マジョリティ・ゲーム」を効率よくクリアするための方法なのかもしれない。
気がつけば、指はキーボードの上で滑っていた。

『いつからそんなことをしているのですか?誰がそんなルールを?』

返答に移るまでの間に、今までよりも活発にチャットのやり取りが行われている。私は今、目の前にいる多数のデフォルト顔の内のキーボードを叩いている一人と会話しているのではなく、この同じ考えを目指そうとしているかのようなデフォルトの集団と会話している気分だ。

『>>私たちの名前は全員がサイトの用意したデフォルトネームを使っています。だからそれが「こうすけ」なのか「ゆうた」なのか、はたまた「しょうた」なのか、果たしてどのデフォルトネームの人がそうなのかは判別がつきません。それに、犯人探しのように対象を見つけるのは普通の事ではないし相手を追い詰める。するべきではない』

一人が全員を、全員が一人を統括する。相互監視の上で得られた安心という利益は自由を捨てる事によって成り立つ。

『今までここに来た人で、翌日から来なくなった人はどれくらいいますか?』
『>>分かりません。ですが恐らく多くはないと思います。外ではこのサイトは話題になっていませんし、私たちも話題にしません』
『それは何故ですか?』
『>>私たちの平穏というか、今の環境を壊す要因になる人はこの世界に幾らでもいます。そんな人には出来るだけ来てほしくないと普通の人は考えます。だから私たちはこのゲームを宣伝しません』

果てしなく保守的で、行動が逃げと守りに特化している。例え偶然ここに辿り着いた人が「ここの風潮やプレイスタイルはおかしい」と主張した所で、このデフォルト人間たちはその
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