受け継がれた意地
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上がり過ぎた名声と、尊敬している秋蘭が彼を高く評価している事から、流琉は凪までとは行かないまでも秋斗に少しばかりの憧れを抱いている。まあ、店長に幾多の料理を教えた事も理由の一つではあった。
余談ではあるが、秋斗は始め、二人の事を“ちゃん付け”で呼ぼうとしたのだが、背筋がむずむずすると拒否されてがっくり落ち込んでいた。
――流琉はマセているから、このままでは拙いわね。
憧れは恋愛に発展しやすい。それが幼い少女であればあるほどに。
風が言っているように秋斗が幼女趣味の危険性は――雛里を見た以上は完全に否定できないにしても――誰彼であろうと手を出すようなモノでは無いと雛里から説明されている為にあまり心配はしていない。
しかしながら、流琉からではどうか。
奥手で恥ずかしがり屋な流琉が秋斗に惚れれば、朔夜や月、詠のように哀しい想いを増やす事になる。雛里の悲恋は曹操軍の重鎮たちの間でも話題になっているのだ。
年齢的にも、時期的にも、まだそういうモノは早すぎる。葛藤を繰り返して情操が育まれていくのは華琳とて分かっているが、それでも、幼い流琉が片足を突っ込むには絶望が深すぎて、まだ時期尚早と言えた。
ふと、先ほどまで乱世の為に出来る事を考えていたはずなのに、また他人の恋愛沙汰を考えて……と華琳は自分の思考に呆れが湧くも、考えてしまったモノはしょうがないと切って捨てた。
後に、子供の頭は撫でておくモノだ、と言うかのように手を伸ばしかけた秋斗を、牽制の為にジロリと藪睨み……する前に、
「誰かれ構わず頭を撫でようとするな、バカッ! するなら街の子供だけにしなさい!」
「いてっ!」
詠がその腕を叩き落とした。余りに自然なやり取り。姉が弟に叱るような。
まったくもう、と腰に手を当ててジト目で秋斗を睨む詠。秋斗は居辛そうに、またやっちまったか、と言うように頭をポリポリと掻いていた。
そんな二人がおかしくて、季衣と流琉はクスクスと愛らしい笑みを零す。秋斗は苦笑を一つしてから、楽しげに笑う二人に謝った。
「……子供扱いしちまってすまんな、二人とも」
「ふふーん、そうだよ兄ちゃん。えーりんは分かってくれてるのにさ。ボク達もう子供じゃないもんねー」
「もう、季衣ったらすぐ調子に乗って――」
そのまま他愛ない会話が流れて行く。穏やかな空間は居心地がいい。
また思考がソレに向けられそうになっている事に気付き、華琳は微笑みを浮かべながらも心を切り替えた。
「さて……詠、話して貰えるかしら。親衛隊の改善点、見つけたんでしょう?」
さらりと流れた華琳の声に、三人のやり取りを微笑ましげに見ていた詠は知性の灯った眼差しを向けた。
自分達の部隊の事である為に、季衣と流琉の二人も直ぐそちらを向いた。秋斗も疑
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