受け継がれた意地
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琳が直接練兵をした事によって、士気も、覚悟も、想いも、全てが研ぎ澄まされた。新しく取り入れさせた戦術も、仕事に励んでいる間に小隊長達がカタチとして出来るようにはしていた。
それでも……足りないのだ。それも何が、とははっきりと分からない何かが。
苛立ちが込み上げる。まるで黒麒麟に負けているような、そんな気分にさせられる。
確かに毎日のように練兵をしなければ、秋斗のような狂信は得られないだろう。元より華琳とはやり方が違うのだから当然と言えば当然。されども、自分ならば今すぐには無理でもあの見事な部隊の完成系を作り出せる……と、華琳は自負していたのだ。
何故、とそればかりが浮かび、心に沸き立つのは悔しさ。
雛里は出来ると言っていた。しかし、例えこのまま毎日練兵をしようとも辿り着けないと華琳は感じていた。
きっと雛里が気付いていなかった事があるのだ。考えても答えは出なかった。分からない事が、ただもどかしい。
ふいに、華琳の耳に後ろから駆けてくる二つの足音が入った。軽快なモノとどうにか着いて行っているようなモノ。
振り向くと見えたのは……何やら思考に潜っているらしい秋斗と、明るい表情ながらも不敵に見える詠。照れ屋でツンケンしてばかりの詠が秋斗の手を引いているとは……よほど嬉しい事があったのだろう、そう考えて、華琳はクスリと小さく笑った。
――もしかして詠は分かったのかしら。
自らで解けなかったというのは些か心にささくれを齎したが、それでも答えが見つかったなら上出来である。戦が差し迫っている以上、こればかりに頭を悩ませる事も出来ず、追加で練兵に時間を割く訳にはいかなかったのだから。
「兄ちゃん! ボク達の戦いどうだった!?」
「おお、凄かった。許緒と典韋が率いてた場所は特に。夏候惇隊も手古摺ってたみたいだ。戦場での二人の連携も見事だったし、あの元譲に慌てた顔をさせれるってのは霞でもあんまりないだろうよ」
「へっへ〜ん。でしょでしょ? ボク達二人なら春蘭様だってやっつけちゃうんだから!」
「ははっ、その意気だ。このまま行けば二人とも、いつか元譲や妙才を追い越しちまうんじゃないかな」
近付いて立ち止まった秋斗に対して、親しげに声を上げて先程の演習の感想を尋ねる季衣には満面の笑み。嘗ての様な敵意は全く無い。
今朝、記憶を失ってから初めて出会ったにも関わらず、季衣は秋斗の事を兄と呼び始めている。さすがに真名を預けるまでは言っていないが、敵視している鈴々への対抗心である事は予想に容易い。
答える秋斗も何処か本当の妹と話しているように穏やかだった。
「……ありがとう、ございま、す」
消え入るような声。
流琉は恥ずかしそうに顔を真っ赤に染め、もじもじといじらしく指を合わせて身を捩っていた。
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