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乱世の確率事象改変
受け継がれた意地
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を守る彼女達と“肩を並べる”為に背中を追い掛けている。なればこそ、彼女達の為の部隊なのだ。
 兵士達は眉根に苦悶を刻んでいた。自分達はいつも小さな背中を見て来たが故に。覇王を真に守っているのは……右腕や神速、その部隊こそ相応しいのだと気付いてしまった。

「違うだろう? なら、あの子達と肩を並べたいのか?」

 違う……そんな事、出来るか。大の男が少女と肩を並べてどうする。
 心の内で、反発の言葉が湧いて出た。兵士一人が、秋斗に先程問いかけられていた者が、ギリ、と歯を噛みしめた。

「……否」

 規律を守れ、そう言われていた兵士が、目の前の男を射殺さんばかりに睨みつけて言葉を零した。
 聞こえていようとも、秋斗は目を細めただけで続きを紡いでいく。

「その様で、先を生きる子供に胸を張って言えるのか? 我らは覇王を守る親衛隊なのだ、と」

 思考は巡る。
 もし、子供達が自分達の戦う姿を見ていたなら……子供に守られる自分はどう映るのか。

「……否っ」

 先ほどよりも大きな声が上がった。
 幾人も、幾人も、そうでは無いと心を燃やす。

「覇王に期待されないままで、戦場での仕事を子供に奪われたままで、お前らは満足なのか?」

 そうだ。覇王が自分達に将の相手を命じないと言う事は、期待さえされていないという事だ。
 秋斗の問いは、彼らが拠って立つ地盤を揺るがした。使えると期待されているからこその親衛隊のはずなのに、期待さえ向けられないのでは……彼らの存在理由が無くなる。それでは覇王に守られているだけなのだ。

『否っ!』

 轟、と悔しさに塗れる怒りの声が上がった。もはや全ての兵が、秋斗に燃える眼差しを向けていた。

「そう、断じて否! お前らは守る側だろうが! 女子供に守られるのは誇り高い親衛隊では無い!」
『応っ!』

 一部の乱れも無い返答が叩きつけられる。
 秋斗が言葉に乗せて送った熱は、彼らの心を燃やした。

「他者に願うな己で守り抜け! お前らが持つ意思の剣は覇王を守り、その行く道を切り拓く為にある! 誇れ、今よりお前らは真の覇王親衛隊となれるのだ! 男の意地を世界に打ち立てよ! 想いの証を心に刻み込め!」

 震える。手が、脚が、胸が、心が……。彼らは道を示された。自身の奥底に封じられていた、子供の頃に持っていたはずの想いを肯定された。

 そうだ、そうなのだ。自分達は守られる側であってはならない。生んでくれた母を守るように、愛する妻を守るように、愛しい我が子を守るように、覇王と、彼女が愛する少女達を守るのが、我らの使命であるのだ、と。
 既に先駆者はいる。結果として、同じように守れるのだと示されている。
 彼らはなんと言っていたか……同じモノが我らの掲げる証
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