受け継がれた意地
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っているが故に、それを率いた秋斗の話は興味を引いた。
幾人かの兵士達は驚愕に支配されていた。黄巾時代、追随していた義勇軍で徐晃隊とだけは話をしていた事があった。合同訓練もしたことがある。だから毎日黒麒麟に一騎打ちを仕掛けていた男を知っている。そして……黒麒麟を兵士何人で抑えられるか、そのような練兵をしていたことも、知っていたのだ。
「目指していた先は黒麒麟だ。その男はな……黒麒麟になって守りたかったんだよ。共に戦う仲間を、美しい将と軍師達を、次の時代に生きる子供達を……乱世を駆けると決めた男として、守る側に立ってたんだっ……自分こそが守る側だと、命と意地を燃やして示してたんだよっ! お前らに男の意地は無いのかよっ!」
気付けば声を張り上げていた。その男の鮮烈な生き様と最期は、記憶に無くとも心を奮わせる。
胸の熱さが伝えている。悔しい、羨ましい、同じ男であるのに何故こうまで違うのだ、と。
秋斗は、もう知ってしまったのだ。雛里に守られている事を、新しい絆達が優しく包み込んでくれている事を。
彼は無様で滑稽な道化師だ。たった一人の少女を笑顔にすら出来ない、彼女の心を守れない、そして彼女達に何も返してやれない……その悔しさが今の秋斗の心を燃やし尽くしている。
彼女が笑ってくれたら秋斗は救われるのだ。しかしそれは『今の秋斗』では出来ない。傷つける事しか出来ない。だから羨ましい。黒麒麟が、黒麒麟の右腕が、黒麒麟の身体が……狂おしい程に羨ましかった。
どれだけ願った事か。幾度の夜を越えて願い続けてきた。自分で助けたい、守りたい、救いたいという渇望を、どれだけ抑え付けてきたか。
なのに何故、目の前の男達は守られる事に満足している? 何故、守る事を義務として受け止め安穏としている?
違うだろう! 決して! 誰かを守りたい男なら、そこに満足という諦めを持ってはならないではないか!
叫び出したいほどの情熱は、秋斗を熱く、熱く滾らせる。胸の内からマグマのような熱さが溢れてくるのが分かる。
だから、秋斗の言葉には想いが乗っていた。記憶が無くとも、心を捻じ切りそうな悔しさと羨望があるが故に、彼の言葉は重く、熱い。
「なぁ、お前ら? そんな無様な姿で満足か?」
兵士達にはもう、怒りはなかった。
彼の頬には涙が伝っていた。声は震えていた。悔しさに震える男泣きの涙は、兵達の心に小さな波紋を広げ始める。
「お前らは女に背中を見せて貰う側なのか? お前らは、その背中を追い掛けようとしてるのかよ?」
親衛隊の誰もが、二人の少女の背中を見てきた。秋斗の言葉は兵士の一人一人の心、奥深くに突き刺さる糾弾の刃。
自分達はどうだ? 少女達のようになりたかったのか? 夏候惇隊は、張遼隊は違う。覇王の剣となりて御身
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