受け継がれた意地
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冷たい。思考が上手く回るはずも無い。
答えないなら興味は無いというように秋斗は離れて行った。全員を見渡せる物見台に昇り、ぐるりと一巡、微笑んだままで見回した。
「その様で誇りを語るのか、お前らは」
は……と、バカにしたような、否、心底バカにした吐息を漏らした。
遅れて、軋む音がした。親衛隊達の居並ぶ列から、弓の弦が一斉に引かれたように鳴った。兵達が拳を握りしめる音であった。
聞こえていながらも、秋斗は気にしない。兵士達から怒気が溢れ出そうとそんなモノは予測済み。
「気付いてないのか? バカらしい。その様で曹操軍の最精鋭だと? 笑わせるな」
場の怒りは徐々に、徐々に膨れ上がっていく。彼らの誇りを、今まさに秋斗は穢しているのだ。誇り持て……と、想いを高めてきた彼らにとって、一番怒りが湧くモノだった。
ただ、やはり軍規を乱すことはしない。どれだけ屈辱的でも、侮辱されても、彼らが覇王の言いつけを乱す事は無いのだ。
「怒るなよ。お前らは今日の戦いで疑問を持たないのか? なんでわざわざお前らよりも年下の、ましてや自分の子供と遊んでいてもおかしくないような許緒と典韋が夏候惇を抑えに行ったんだ?」
質問を投げかけられれば考えざるを得ない。
最精鋭の親衛隊に入れるほどであれば協調性があるのは当然。覇王が認める黒麒麟が、意味の無い事をするはずがあるか、と感じていたのも一つ。
巡る。頭の中で質問を反芻する。誰もが、誰しもがそれについて考えて行く。
覇王の規律を理解し、徐晃隊の連携連撃を覚えられるほどだ。彼らは頭もそう悪くは無い。それならば、彼の言を考える事は出来る。
それでも、秋斗の真意を理解出来るモノは少ない。それも計算の内だというように、秋斗は感情を抑え付けながら意地の悪い笑みを浮かべた。
「お前らは覇王を守ってる気かもしれないが、その実、覇王に守られてるのさ。夏候惇と相対するには被害が増えるから、兵よりも優れている女の将を宛がって被害を減らそう……クク、なんでお前らで止められなかったんだよ」
「それはっ……」
堪らず、一人の兵士が口を開いた。しかし秋斗に睨まれて止まる。
なんたる傲慢か……と兵士達は感じていた。徐公明は自分の力に酔っているのだ、お前と同じような事が出来るわけが無いだろう、と。
「俺が強いからこんな事言えると思ってるのか? バカ言え。じゃあ俺の部隊はどうだったんだよ。思い出してみろ。見て来たんだろ? 徐州で」
兵士達の心の内を読んだかのように秋斗は兵士に問いかけた。
瞬時に、兵士達の顔は恐怖に堕ちて行く。例え小さな戦場であろうとも死地として、自らの命を燃やして戦っていた部隊を思い出したのだ。
彼の者達を操る鳳凰が救援の為に将を呼んだか……否
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