用心棒‐グレンファイヤー-part1/アルビオンへ
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、ね?」
心配そうにシュウの顔を覗き込むエマに、テファは安心させようと優しく言葉をかけた。
「痛そう…なんで、こんなに怪我しているの?」
今ジャックが言った通り、疑問ばかり浮かぶ。このウエストウッド村は何もない村。争い事なんて子供たちの口論と喧嘩という平凡な日常の中に存在するもの。でも、そんな村でシュウがここまで傷つくことはありえないはずだ。ましてや、やけどを負わせるような火なんて起こったらすぐに気付くはずだ。
その時、テファの脳裏に、今朝見たあの夢の光景が浮かぶ。悪魔というべき、翼を駆る怪物の放つ光に、彼が………『今より幼き日のシュウ』と思われる少年が飲み込まれるという、怖い夢。
自分がすやすや寝ている間に、一体彼の身に何が起きたと言うのだろうか。一見何事にも無関心そうな彼が、こんなやけどを負ってまで何をしようとしているのだろうか。テファは、知らないままではいられなくなりつつあった。自分は何も、彼のことをほとんど知らないままだ。このまま遠慮したままで、何も聞かず、何も知らないままで本当にいいのだろうか……。
「シュウ兄の服、ここに掛けとくね」
ジムがシュウの黒いジャケットと赤いシャツを抱え、部屋に用意された机の上に置こうとすると、上着の内ポケットからコトッと何かが落ちた。
「なあに、これ?」
サマンサが身をかがめてそれを確かめる。それは彼が変身に使うアイテム『エボルトラスター』と、護身用の銃器『ブラストショット』の二つだった。
「触るな…」
ふと、声が聞こえてきた。シュウが、目を覚ましたのである。
「シュウ…」「兄ぃ!!」
よかった…目を覚ましてくれたようだ。安心するテファと子供たちだったが、彼はベッドに寝かされたままの体勢で手を伸ばし、体を起こしてエボルトラスターとブラストショットを手に取ろうとする。その途端、彼の全身にやけどの痛みが電撃のように走る。
「触るな…ぁぐ…!!」
「無理したらダメ!」
やはりまだ体が痛むようだ。テファはすぐさまシュウに寝るように言う。すると、部屋にマチルダが入ってきた。手には冷水と食事が一式用意されていた。
「シュウ、まずは水で体を冷ましときな」
マチルダはコップを渡してシュウに水を飲むように言う。シュウはコップを手に取ると、その中の水を一気に飲み干した。飲み終わってコップから口を離すと、はぁ…はぁ…と荒い息を吐き続けた。
「あ〜、一気に飲んだらむせちまうよ?」
「…」
シュウは無言だった。無言のまま遠い目で彼は窓の外を見る。そして、昨日の一件が彼の脳裏に蘇る。あのゼロと言う巨人の後先考えない行動がビーストを倒したのと引き換えに、多くの街の人たちが犠牲になった。街も酷い有様となった。あんな結果となった原因は、ふがいなかった自分にもある。そう思うと、シュウは自分を許せなくなった。
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