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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 士官学校 〜
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ションの授業の後に多い事も分かった。皆不思議がったが理由が分からなかった。だが、ある時俺にはその理由が分かった……。

「アントン、ギュンター、シュターデン教官に嫌味を言われたぞ。最近弛んでいるんじゃないかとな。それと何故教官に嫌味を言われたかも分かった」
二人が顔を見合わせた。
「シミュレーションで負けたからだ」
「はあ?」
二人とも不思議そうな顔をしている。

「負ける奴なんて幾らでもいるだろう」
「アントンの言う通りだ。理由にならないな」
「いや、理由になる。負けた相手が悪かったよ、対戦相手はヴァレンシュタインだったんだ」
二人が驚いている。“本当か?”とギュンターが訊ねてきた。

「間違いない。対戦データを調べた。俺の相手はヴァレンシュタインだった。多分俺の他にもシュターデン教官に嫌味を言われた奴はヴァレンシュタインに負けたんだと思う」
アントンが太い息を吐いた。ギュンターは首を振っている。

「それ、拙くないか。教官が対戦相手を教えているとも受け取れるぞ」
「そうだな、俺もそう思う。アントンの言う通りだ」
士官候補生にシミュレーションの対戦相手を教える事は禁じられている。破れば軍籍を剥奪されるだろう。アントンもギュンターも囁くような声になっていた。

「どうする?」
「どうするって……」
「困ったな」
三人で考えたが解決策が見つからない。結局クレメンツ教官に相談した方が良いだろうという事になった。あの人なら上手く治めてくれるだろう、というより厄介事は他人に押し付けよう、そんな気持ちだった。それに俺にはもっと大事な事が有った。

「俺、ヴァレンシュタインと話してみようと思うんだが……」
俺が話しかけると二人が顔を見合わせた。誰もが彼を避けている、正気じゃない、そう思ったのだろう。
「彼は凄いよ、シミュレーションで俺は全く相手にならなかった。コテンパンにされたよ。彼と親しくなりたい、そしてもう一度シミュレーションをしたいんだ」
また二人が顔を見合わせた。
「本気か?」
「本気だ。データを見るか」
「ああ、是非とも」



それがきっかけだった。俺とアントン、ギュンターはエーリッヒと親しくなった。そして今が有る。もし、そうでなければ俺達三人、いや四人の未来はもっと違ったものになっただろう。
「なあエーリッヒ、もう一度士官候補生に戻ったとして俺やアントン、ギュンターと友達になろうと思うか?」
エーリッヒが俺を見た。

「そうだな、卿とギュンターはともかくアントンはちょっと……。彼の所為で随分と酷い目にあったからね」
本心ではない、眼が笑っている。
「それは近親憎悪だろう。俺には卿とアントンは良く似ているように見える。どっちも人騒がせで悪戯好き、おまけに性格も悪い、違うかな」

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