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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 士官学校 〜
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戦術能力を証明するなどという馬鹿げた自己満足のために戦闘を行って部下を死なせる事は出来ません。無意味な損害を避けるという意味において撤退はおかしな選択ではないと考えます」

教室内がシーンとした。いや、言ってる事は分かる、確かにそうかもしれないが教官に喧嘩売っているに等しいぞ。シュターデン教官がヴァレンシュタインを不機嫌そうに睨み付けた。どうなるんだ、これ。皆凍り付いてる、息する事も出来ない感じだ。誰かが喉を鳴らした。音がやたらと大きく響いた。

「残念な事に君は幾分戦意が不足している様だな」
戦意不足と言われてもヴァレンシュタインはまるで動じなかった。教官の顔がひくついた。不機嫌、いや怒りだな。
「君は戦意不足と言われて恥ずかしくないのかね、ヴァレンシュタイン候補生。私には耐えられんな、自分の教え子に臆病者が居るなどと言われるのは」

ネチネチとシュターデン教官が嫌味を言い出した。勘弁してくれよ、相手は十二歳の子供だぞ、大人げないだろう。
「無意味な戦死者を出す事以上に恥ずべき事が有るとは思いません。戦意過多、戦略過少と言われるよりはましです。シュターデン教官は自分の教え子がそのように評価される事を御望みですか?」

え? 何を言った? 戦意過多? 戦略過少? それってやる気だけ有る馬鹿って事か? おいおい、しれっとした顔でとんでもない事を言うなよ。シュターデン教官の顔面が紅潮している、怒り心頭だ。今だけでいい、耳が聞こえなくなってくれ。それが駄目なら窒息死だ。呼吸を止めて、一、二、三、……無理だ……。

「君は戦術の重要性を理解していないようだな、戦場では戦術能力の優劣が勝敗を決するという事を覚えておくことだ。……席に座りたまえ」
不機嫌が人間になれば多分シュターデン教官が出来上がるに違いない、そう思った。しかしヴァレンシュタインは何も感じていないかのように席に座った。こいつ、教官を怒らせても何も感じていないらしい。

授業が終わった後、ギュンター、アントンの二人と一緒になった。
「あれ、凄かったな」
「ああ、凄かった。俺、眼が点だったよ。あいつ、本当に士官候補生か?」
「俺も仰天したよ、でも間違ってはいないだろう。大きな声では言えないが」
結構声が大きいぞ、アントン。ギュンターもそう思ったのだろう、呆れた様な顔でアントンを見ている。

「おい、前を見ろよ」
アントンの声に前を見た。廊下を歩くヴァレンシュタインが居た。一人だ、彼が歩くと自然に前が空いていく。皆、彼と関わるのを畏れているのだろう。だがヴァレンシュタインは気にした様子も無く歩いている。無神経なのか、それとも図太いのか……。



その後、暫くするとシュターデン教官が一部の士官候補生に不快そうな態度を取る事が分かった。そしてそれがシミュレー
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