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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 士官学校 〜
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しくないや。何かにつけて嫌味を言われるだろう、うんざりだ。

「では君は?」
今度指名されたのはリヒャルト・エンメルマンだった。時々話す事が有るが悪い男じゃない。エンメルマンが立ち上がった。上手く答えろよ。
「後退しつつ縦深陣を構築します。反乱軍が攻め寄せてくれば引き摺り込んで攻撃します」
うん、なかなかじゃないのかな。シュターデン教官も頷いている。

「まあそんなところだろう。反乱軍の兵力が多い以上、こちらから積極的に動く事は控えるべきだ。最善は味方に来援を要請し自分は反乱軍を引き止める。味方の来援後、協力して反乱軍を叩く。そんなところだろうな。時間を稼ぐ以上受け身に徹するのが望ましい」
なるほど、確かにそうだ。性格は悪いけど流石は士官学校教官だな。素直に感心した、彼方此方で頷いている人間も居る。

シュターデン教官が満足そうにしている。皆が教官を尊敬の目で見ているのが嬉しいのかな。教室内を見回していたシュターデン教官が視線を一点で止めた。満足そうな表情が消えている。俺もシュターデン教官の見ている方向に視線を向けた。一人の士官候補生が詰まらなさそうにしている。明らかに気の無い表情だ。直ぐに分かった、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、最年少の士官候補生だ。そしてあの有名な事件の遺族でもある。

「ヴァレンシュタイン候補生、君はどう思うかね」
シュターデン教官の指名にヴァレンシュタインが起立した。表情は無い。
「撤退します」
「撤退?」
撤退? シュターデン教官が驚いている。教室内でざわめきが起きた。皆が驚いていた、俺も吃驚だ。教室の中でヴァレンシュタインだけが平静な表情をしていた。なんでそんな事が言えるんだ? 戦意が足りないと叩かれるぞ。

「哨戒任務中の遭遇戦です、こちらが不利なら無理せず撤退するべきだと思います」
シュターデン教官が不機嫌そうな表情をしている。面白く無い回答を得た、そんなところだな。戦意不足、そう思ったのだろう。戦争だから勝たなければならない、戦意不足は一番忌み嫌われる要素だ。軍人なら、いや士官候補生、幼年学校生でもその事は知っている。当然ヴァレンシュタインも知っている筈だ。

「君は自分の戦術能力を以て反乱軍に勝利を得ようとは考えないのかね? 戦術とは何かを理解しているのかな?」
シュターデン教官が皮肉の溢れた口調で問い掛けるとヴァレンシュタインが微かに笑った。苦笑か? それとも鼻で笑った? おいおい、教官相手にそれは無いだろう。お前、まだ十二歳だぞ。案の定だ、シュターデン教官がムッとしていた。馬鹿にされたと思ったのだろう。

「反乱軍の指揮官の戦術能力が自分より低いという確証は有りません。それに多少の優劣は戦力差が埋めてしまいます。つまり兵力の多い反乱軍が圧倒的に優位というわけです。自分の
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