暁 〜小説投稿サイト〜
無欠の刃
アカデミー編
夕焼け
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に出した。
 周りの視線が釘告げになる。
 ひくひくと、イルカなどの一部の教師の顔面が引きつる。サスケは完全に動きを停止し、凍り付いたようにカトナの横顔を見つめる。
 滅多に見せない笑顔さえ浮かべたカトナは、もう片方の手で短刀を構える。

 短刀「夕焼け」。
 特に何かしらのこだわりがあってつけたわけではない。大太刀が「黄昏」ならば、統一性を持って時間に関係する言葉で名づけられたそれ。
 大太刀と比べれば、その刀身はあまりにも短い。大太刀「黄昏」が1m20cmもあるのに対し、この短刀「夕焼け」はその6分の1の20cmしかない。
 スピード型であり、近接攻撃を得意とする山中いのに対しては、どちらかというと大太刀の方が有利だろう。
 だが、カトナは有利不利で、短刀「夕焼け」を使わないつもりはなかった。

 山中いのは心転身の術を使うが、あまり厄介なくのいちではない。
 カトナはそう、判断をしていた。
 体術は確かによく鍛えられているし、チャクラコントロールはほかの生徒に劣っておらず、幻術・忍術の腕はこの年齢にしては優秀。気が強いので、臆病風に吹かれて逃げたりもしない。
 普通ならば、強い部類に入るだろう。……だが、決定的なまでに、くのいちとしての自覚が足りない。

 この年頃の女子に、そこまで、忍びとして貫き通せとまでは迫る気はないけれど、だからって、恋愛にうつつを抜かしていいわけではないと、カトナはそう思っている。
 恋愛を理由に試合に挑むことは、敵にも、相手にも、自分にも悪いことだ。
 そして、その悪いことを女を理由にする輩に、カトナはくのいちになってほしくない。
 そんなのがくのいちになるということが、カトナは許せない。

 カトナにとってのくのいちは、命を賭してでも、忍びとしての生き様を貫いた、あの赤き忍びのことだ。もううまく思い出すことが出来ないけれど、それでも最後に、自分を呼んでくれた声だけ覚えている、あのくのいちだ。
 母としての思いも、父としての思いも、抱えていたのに、それでも忍びであり続けた二人の忍びだ。

 だからこそカトナは、目の前の少女が大嫌いだ。
 目の前の少女どころか、彼女と仲がいい薄桃色の髪の少女だって嫌いだ。
 恋愛だなんだと騒ごうがどうでもいい。サスケが好きだというのだって、サスケが付きあいたいなら付き合えばいい。
 サスケはどうせ、目の前の女に見向きもしないだろうから、告白してふられてしまえばいいのだ。
 その程度しか、思わない。

 けれど、くのいちなのだから、忍びなのだから、そんなのを理由に戦ってほしくない。
 サスケのことを、長年かけてえた己の居場所を、商品としてかけてほしくない。
 サスケを理由に戦ってほしくない。
 勝ちたい、負けたくないを理由に戦って
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ